分配金利回りをチェックする

 J-REITに投資することによって得られる収益は、J-REITの投資口の値上がり益と、分配金の2つがあります。もちろん値上がり益の確保を目的に投資するのもよいのですが、J-REITは長期で保有することで、相対的に高い分配金利回りを得られるところに、その投資の魅力があります。

 

 

高い分配金利回りが魅力

 分配金利回りとは 、 1年を通じて得られる分配金の総額を、 現時点の投資口価格で割って求められる利回りです。株式の配当利回りと 、 考え方は同じです。

 J-REITの魅力は、この分配金利回りにあります。2017年12月時点の 、 東証1部上場全銘柄の配当利回り平均は 、1.42%です。これに対して、J-REIT の分配金利回りは、全上場銘柄平均で4.15%もあります。

 特に日本は、1990年代にバプル経済が崩壊して以来、長期的に金利は低下傾向をたどり、 一時はマイナス金利まで現実のものとなりました。ちなみに2017年12月時点における定期預金の利率は 、預入金額の多寡、預入期間の長短に関係なく、年0.01%しかありません。日本における長期金利の基本となる10年物国債利回りも、わずかに0.04%です。これらの利回りと比べたとき 、J-REIT の分配金利回りである4.15%が、いかに高い水準であるかが分かります。

 ただし 、分配金利回りについては注意点もあります。確かに、4.15% という利回りは、他の金融商品の利回りと比べたとき 、 かなり高い水準ではあるのですが、 J-REIT は投資口価格が常に変動します。購入時の投資口価格に対して4.15%という分配金利回りが得られたとしても、その後、投資口価格が値下がりしたら 、 トー タルの収益はマイナスになるケ一スもあります。

 ここが、預金の利率や債券の利回りと違うところです。1年物定期預金の利率が年0.01%だとして 、1年後に得られるリターンは、 預入元本に対して確実に年0.01%になるのですが 、 J-REIT の場合、 トータルで見た収益率が、確実に4.15%になるとは限らないのです。

 さらに言えば 、 分配金利回りは預金利率のような確定利つきではありません。投資したJ-REITに組み入れられている不動産物件から得られる賃料などの収益力によって変動します。また 、 現時点の分配金利回りが4.15%でも、 投資口価格が上昇する一方で分配金が変わらなければ 、 分配金利回りは低下します。

 

 

分配金利回りは銘柄によって異なる

 先ほどふれた4.15%という分配金利回りは、あくまでも上場されているJ-REIT全銘柄の平均です。実際の分配金利回りは 、 銘柄によって異なります。 たとえば、2017年12月28日時点における分配金利回りを見ると 、最も低いのは、「三井不動産ロジスティックスパ一ク投資法人」の3.08%ですが、最も高い銘柄は「インヴィンシプル投資法人」の6.54%です。このように、銘柄によって分配金利回りには 非常に大きな差があります。

 なぜ、これだけ分配金利回りに差が生じるのか。その最大の原因は信用力にあります。個別に分配金利回りを見ると、やはり大手不動産会社系列の信用力の高い J-REITは、総じて分配金利回りが低く、それ以外の、たとえばマンションデベロッパ一などが組成しているJ-REITは、信用力が相対的に低い分、比較的、分配金利回りが高めになっています。 長期保有して、高い分配金利回りを得るという戦略がとりやすいJ-REITではありますが、信用力が低いJ-REITに投資した場合、長期的にスポンサー企業の経営安定性が維持されるのか、という点をしっかり考える必要があります。J-REITを長期保有し、高い分配金を得るためには、この点の見極めが重要になってくるのです。

 

*スポンサー企業
J-REITは「資産運用会社」が投資先の物件を選定し、投資します。スポンサー 企業とは、資産運用会社の大株主のことです。J-REITは、投資をするにあたって、投資口を発行して資金調達をするだけでなく、銀行から借入を行ったり、投資法人債という債券を発行して資金を調達したりします。この資金調達力に、スポンサー 企業が大きく影響します。つまり、スポンサー 企業が世の中で高い信用を得ている企業だと、そのJ-REITは資金調達がしやすく、よりよい物件を組み入れられることにつながるのです。