不動産投資とREITの違い

 分散投資によって安定的に資産を増やしていきたいのであれば、投賣先のひとつとして視野に入れたいのが「不動産」です。現物の不動産を購入するにはまとまった資金が必要ですが、REIT(不動産投資信託)を活用すれば、少額から不動産に投資することが可能になります。

 

 

不動産投資のリスクは流動性

 不動産投資には、さまざまな形があります。昔、日本で起こったバプル経済のときは、それこそ地方の原野までもが投機の対象になりました。この時代の不動産投資は、地価の値上がり益を狙ったものが主流でした。

 ただ、土地を取得する不動産投資には、多額の資金が必要になります。まさに一部 の富裕層のみが手を出せる世界でした。ー方、そこまで余裕資金を持っていない普通の人たちは、ワンルームマンション投資に資金を投入したのです。 噌このようにして、「不動産の有効活用」という名目のもとに、不動産は株式や憤券などと同様、資産運用のツールとして注目されるようになってきました。90年代に入り、日本の不動産価格は大きく下落し、いわゆるバプル崩壊の引き金となりましたが、 近年では徐々に地価も回復を見せ、銀座のー等地の地価は、すでにバプル当時の価格を超えています。

 こうした中、改めて不動産投資が注目を集めていますが、不動産投資には、他の金融商品にはない大きなリスクがあります。それは、流動性が極端に低いということです。 たとえば、上場株式は売却の注文が成立した日から起算して、4営業日目には現金化されます。債券や投資信託もほぼ同様です。預金であれば、たとえ定期預金であったとしても、解約を申し出た当日中に、現金を引き出すことができます。

 ところが、不動産の場合、そう簡単に現金化できません。対象が土地であろうとも、 ワンルームマンションであろうとも、不動産会社が買い手を見つけて来ない限り、現金化できません。しかも、土地もワンルームマンションも、それなりに多額の資金が必要になりますから、自分が現金化したいときに、すぐ買い手が現れる保証もありません。こうした流動性の低さが、不動産投資の最大のリスクなのです。

 

 

J REITなら、ETFのように市場で売買できる

 この不動産投資の最大の問題点である流動性リスクを解消するのが、REIT投資信託)です。

 REITは"Real Estate Investment Trust "の略で、不動産投資信託のことです。ETFと同様に証券取引所で売買ができる投資信託です。米国発祥のこの金融商品は、商業施設やオフィスビル、レジデンスなどを組み入れて運用し、そこから得られる賃貸収入をキャッシュフロ ー として、保有している投資家に分配金を支払います。現物の不動産を購入しようと思うと、少なくても数百万円、場合によっては数千万円、 数億円といった資金が必要ですが、投資信託であれば、数万円で購入することができます。REITは、投資家から集めた資金で不動産を購入し 、 そこから得た賃料収入や売買益などの収益を投資家に分配する仕組みになっています。

 また、 最大のリスクである流動性についても、 通常の投資信託と同様、頻繁に売買がされていますので、資金が必要になったときや値上がりしたタイミングで簡単に現金化ができます。 少額でも多数の不動産に分散投資ができる点もREITのメリットのひとつです。現物不動産の場合、よほど莫大な資金がない限り、多くの物件を所有することは難しいでしょう。そのため、所有物件に空室が出たり、地震や火事などの災害に遭ったりすると一気に収支が悪化する可能性があります。 ー方、REITの場合には、大勢の投資家から集めた資金で多くの物件を保有し 、 運用するので、こうしたリスクを分散することが可能です。また、運用の対象となる不動産も、マンション、オフイスビル、ホテル 、 ショッピングセンターなど到底個人では購入できない大型のものが多いのも特徴です。

 こうしたことから、不動産投資信託の市場規模は世界中で高まってきています。すでに米国では巨大なREIT市場が形成されており、2017年3月時点での市場規模は時価総額で 118兆8,907億円に達 しています。日本は11兆9,064億円と、米国に次 ぐ世界第2位の時価総額となっています。日本の不動産投資信託はジャパンの 「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれます。 J-REITは、言うなれば不動産投資を業とする法人です。投資信託という名はついていますが、実質的には法人であり、 「不動産投資法人」 とも呼ばれます。この不動産投資法人が発行する投資口が東京証券取引所に上場され、さまざまな投資家によって日々 、 売買されています。投資口は、いわば株券のようなものです。 J-REITは投資口の発行によって市場から調達した資金、あるいは投資法人債という債券を発行して調達した資金を用いて、オフイスピルや商業施設、レジデンスなどの不動産物件を買います。そして、それらの不動産物件からもたらされる賃貸収入 をキャッシュフローとして、J-REIT保有している投資家に対して、分配金を支払います。また、J-REITは株式と同じように、証券市場を通じて売買されているため、需要が増えれば投資口価格が値上がりします。 J-REITが土地やワンルームマンション投資に比べて格段に優れている点は、上場市場を通じていっでも自由に売買できる点です。しかも、投資金額も比較的少額なので、多くの投資家が取引に参加しています。他の不動産投資のように、買い手が見つかるまでに時間を要することもなく、株式と同じように、売却の注文が成立した日から起算して4営業日目は、投資家の手元に現金が入ります。この流動性の高さこそが、さまざまな不動産投資の方法の中で、J-REITが最も優れている点なのです。

 

 

投資法人

特定の資産への投資を目的に設立されている法人のことで、「会社型投資信託」とも言われます。投資法人は投資口を発行して、上場市場から資金を調達し、投資活動に用います。また、投資口を購入した投資家のことを「投資主」と言い、株主総会と同様に、投資主総会が定期的に開催されます。