公社債型投資信託

 公社債投資信託は、株式を一切組み入れずに運用するのがルールです。したがって、投資信託という元本が保証されない投資商品であるにも関わらず元本割れリスクが極めて低いという商品性を持っています。

 

超低金利の影響で大半の公社債投資信託は償還に

 公社債投資信託はかつて、投資信託の中で高い人気を得ていました。理由としては、

  1. 元本の安全性が比較的高い
  2. 分配率が預貯金よりも高い
  3. 比較的自由に解約できる

 といったことが挙げられます。

 公社債投資信託は、償還までの期間が比較的短い国際、地方債、政府保証債社債を主な投資対象としています。債券という金融商品は、償還までの起案が短くなるほど価格変動リスクは小さくなります。そのため、この種の短期債を中心にポートフォリオを組むと、投資信託でも預貯金に近い元本安全性を持つ商品になります。

 また、債券の利回りは総じて、銀行預金の利率よりも高いため、債券から生じる利金を分配原資とする公社債投資信託の分配率は、預貯金の利率を上回ります。

 加えて解約しやすいという面もあります。現在、公社債投資信託といえば、MRFですが、いつでも自由に解約でき、現金は解約注文を出した翌営業日に引き出せますが、一定金額を上限にして、解約注文をした当日に現金を引き出すことも可能です。

 

 このように預貯金に近い商品性を持った投資信託ですが、様々な事情があり、商品数が大幅に減りました。公社債投資信託全体の純資産総額は2001年7月がピークで、44兆9000億円以上あり、運用されている商品も500本以上ありました。ところが、2001年10月末に米国のエネルギ0会社、エンロンが不正会計の発覚で倒産。同社の社債を組み入れていた短期公社債投資信託MMF中期国債ファンドの一部に元本割れが生じました。中にはこれ以上の運用継続を断念せざるを得ないものもあり、2002年7月の純資産総額は22兆3000億円程度とピーク時の約半分まで減ってしまいました。その後、低金利は長期化し、いくら公社債投資信託の分配率が預貯金の利率よりも高いとはいえ、絶対的な水準が極めて低くなり、同時に海外の高利回り債券を組み入れて運用する外国債券型投資信託が人気を集めたこともあり、公社債投資信託の純資産総額と、運用本数はどんどん減少していきました。しかも2016年2月には、日銀がマイナス金利を導入したため、公社債投資信託の運用難は深刻な状況に陥り、MMFは全て償還されました。

 

 

証券総合口座の中核になるMRF

 公社債投資信託のうち、大半を占めているのはMRFです。現在、公社債投資信託の90%以上がMRFになっています。

 MRFの正式名称は「マネー・リザーブ・ファンド」です。MRFは「証券総合口座」といって、銀行の総合口座の証券版のようなもので、MRFWO中核商品として様々な機能を持たせています。具体的には、株式や債券、投資信託を購入した際にはMRFにプールされている資金を購入資金に充てると同時に、株式や債券、投資信託を売却した資金は、そのまま自動的にMRFの買い付けに回されます。MRFは購入したところで即座に運用に回され、1日分の無駄もなく分配金が付与されます。また、クレジットカードの決済口座や給与の振込先にも指定できます。

 決済口座や給与の振込口座の運用先となっている投資信託が、もし大幅な元本割れを起こしたら、それこそ大変な事態になります。したがって、MRFはy貯金のy9ウニ元本は保証されませんが、基本的には元本を割り込まないような運用が心がけられています。

 まず、株式は一切組み入れられません。

 その他の投資対象としては、CD(譲渡性預金証書)やコール、CP(コマーシャルペーパー)といった短期金融商品や、償還までの残存期間が最長90日までの短期債券を中心にしています。しかも投資信託会社によっては、償還までの残存期間が最長で90日であったとしても、60日を超える債券は組み入れないといった自主ルールに基づいて運用されているところもあります。そのくらい、元本割れリスクには神経質なまでに配慮して運用されています。

 とはいえ、そのMRFでさえも、一時は元本割れリスクの問題が真剣に考えられた時期がありました。2016年2月、日本銀行がマイナス金利を導入したことによって、MRFの運用も非常に厳しい状況に追い込まれてしまったのです。

 すでに中期国債ファンドMMF、短期公社債型投信が、超低金利のため運用なんに陥り、いずれも大半の投資信託が償還されたうえに、MRFまで元本割れによって償還という事態に陥ったら、公社債投資信託は全滅してしましますし、多くの人が「元本割れはまずないだろう」と思っているのに、或る日突然元本割れしたら、大混乱に陥るでしょう。そのため、MRFに関してはマイナス金利の適応除外とされました。したがって現状、MRFは極めて分配率が低いのですが、かろうじて元本割れは生じることなく運用されています。

 MRFの購入金額は1円以上1円単位であり、取扱金融機関である証券会社が開いて居る時ならば、いつでも購入できます。また、解約も自由で、いつでも手数料なしで解約できます。解約した資金は基本的に翌営業日に受け取ることができますが、キャッシングというシステムを用いれば、500万円を上限にして即日受取も可能になります。

 

 なお、MRF以外の公社債投資信託で現存しているのは、長期公社債投信のみです。長期公社債投信は1月から12月まで12本の投資信託で構成され、年1回、分配が行われます。投資対象は国債をはじめとする安全性の高い公社債で、1万円から購入できます。中途解約はいつでも可能ですが、1万口につき2〜二十五円の解約手数料がかかります。保有期間が短いと、解約手数料が高くなり、昨今のように超低金利で分配率が低い時には解約手数料が差し引かれて元本を割り込んでしまう恐れが生じます。

 

*キャッシング

MRFの現金化は、基本的に解約中ジョンを出した翌営業日になりますが、一定金額までならキャッシングによって即日現金化も可能です。キャッシングとは翌営業日に解約資金が支払われるまでの間、解約した分の受益権を担保にして、解約したその日のうちに現金を支払う制度です。

 

*短期金融商品の種類

  • CD(譲渡性預金証書)・・・第三者に譲渡できる銀行預金。1ヶ月ものと3ヶ月ものが取引の中心。コール市場が銀交換のみの取引であるのに対し、CD市場はオープン市場といって、一般事業法人も取引に参加できる。
  • 無担保コール翌日物・・・銀行間で資金の貸し借りを行う短期金融市場。米国のフェデラル・ファンド金利と同じ性質を持つもので、貸し借りの期間は1日という超短期金融。
  • CP(コマーシャルペーパー)・・・手形取引の一種。CDは銀行が発行し、短期の資金調達に用いられるものだが、CPは一般事業法人が発行し、短期の資金調達を行うためのもの。
  • TB・・・政府が歳入不足を補うために発行するもので、償還までの期間が1年以内の国債のこと。短期国債ともいう。国債なので、元利金の返済が滞るデフォルトのリスクは極めて低い。
  • FB・・・政府短期証券のこと。TBと同様、政府が発行するもので、信用力はCDやCPよりも上。償還までの期間が60日と短く、政府の一時的な資金不足を補うために発行される。