格付けの有無と水準をチェックする

 前項で、J-REITのスポンサー企業の信用力について簡単にふれました。それも含め、 J-REITの信用力を分かりやすく伝えるために付与されているのが「格付け」です。 塞本的に、格付けの高いJ-REITほど、分配金の支払いが滞ったり、投資法人が破たんしたりするリスクが低いと考えられます。

 

 

格付けがない不動産投資法人もある

 格付けは、一般的に債券の元利金返済が滞るリスクを特定の記号で示すものとして 知られています。一般的には、 r A A A 」、「A A 」、「A 」、「BBB」 「BB」 「B」、「C C C」、「CC」、「C」、「D」 という10段階で表示されるケ一スが多く、AAAは最上級格付けとして、元利金の返済が滞るリスク(これをデフォルトリスクと言います)が最も低いと考えられます。

 以下、AA、A、BBB ... へというように格付けが下がつていくにつれて、デフォルトリスクが高まっていきます。なお債券の場合は、BBB (トリプルB)までを投資適格債といって、投資してもまあまあ安全とみなされますが、BB 以下の格付けになると、償還される前にデフォルトに陥るリスクが高いと判断されます。 BB以下の格付けを持つ債券を投資不適格債と言います。

 不動産投資法人の格付けも、考え方は債券の格付けと同じです。格付け記号が下がれば下がるほど、分配金が不払いになったり、不動産投資法人が破たんしたりするリスクが高まります。したがって、実際にJ-REITに投資する際は、最低でもBBBの格付け以上のものに投資することをおすすめします。

 ちなみに日本銀行は、これまで量的 ・質的金融緩和 といって、金利を引き下げるだけではなく、市場に流通している国債などを買うことによって、大量の資金供給を行ってきました。その購入対象のひとつがJ-REITですが、一国の中央銀行が自らのバランスシートでJ-REITを買い入れるにあたっては、やはり信用力の高いものを買う必要があります。その基準として 「AA 」以上の格付けを持つJ-REIT に限定して、量的 ・質的金融緩和のための買い入れを行っています。

 不動産投資法人がどの格付けを取得しているかについては、不動産投資法人のウェブサイトで 「財務情報」を見れば分かりますが、なかには格付けを取得していない不動産投資法人もあります。こうした不動産投資法人には、スポンサー企業が新興デベ ロッパーというケ一スが多いようですが、安全性を重視するのであれば、とりあえず投資は見送ったほうが無難です。ただし、分配金利回りは高水準であるケ一スが多いため、多少のリスクと引き換えに、自分で負えるリスクの範囲内で投資してみるのも一法です。

 

 

複数の格付けを比較しよう

 不動産投資法人で格付けを取得しているところは、スタンダード&プアーズ(S&P)、ムーディーズ格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)のいずれか、もしくは複数社から格付けを取得しています。ちなみにS&Pとムーディ一ズは米国の、R&IとJCRは日本の格付け会社です。

 格付け会社はそれぞれ独自の基準と名称でもって格付けを行っています。

 たとえば、不動産投資法人の中では最も早い時期に上場された、日本ビルファンド投資法人の格付けを見ると、S&Pの長期会社格付けが「A+」、R&Iの発行体格付けが「AA」、そしてJCRの長期発行体格付けが「AA+」です。このように三者三様、格付けの基準や名称が異なります。 業界内でよく言われているのは、米国の格付け会社は基準が非常に厳しく、国内ではJCRの格付けの基準が最も緩やかということです。実際、複数の格付け会社から格付けを取得している不動産投資法人で比較すると、この傾向が見られます。逆に新興デベロツパーなど、一般的にスポンサー企業の信用力が低いと考えられている不動産投資法人は、JCRの格付けのみを取得しているケ一スも見られます。こういった不動産投資法人は、S&Pムーディーズの格付けを取得している不動産投資法人に比べて、信用力の面でやや劣るかもしれないということを頭の片隅に置いておくとよいでしよぅ。 ただし、格付けの低い不動産投資法人は、それだけ分配金利回りが高めになる傾向も見られるため、収益性を重視する投資家にとっては妙味があるともいえるでしょう。 

 

 

格付け会社は、決して公的な機関ではありません。一民間企業です。「格付け」と言うと、何やら公的かつ中立な機関が作成・公表しているもののように聞こえますが、実はそうではないのです。もちろん、格付け会社はできるだけ詳細に財務内容を読み込み、投資家に対して正確な格付け情報を提供しようとしていますが、時には優良格付けを取得していたにもかかわらす、デフォルトに陥るケ一スもあります。実際、あのサブプライムショックが起こる前、格付け会社サブプライムローン(信用の低い人に対するロ一ン)を組み入れた証券化商品に対して、高い格付けを付与していたという事実もあります。したがって、現在の格付けがすべて正しいとは思わないようにしましょう。