PO(公募増資 ・売出し)と立会外分売

 すでに上場している株の公募増資 ・売出しや、立会外分売の概要、その申し込み方法について見ていきましょう。

 

 

時価よりディスカウントした値段で買える

 新規公開株の公募とは別に、すでに上場している企業の株の公募増資・売出しというのがあり、PO (PUBLIC OFFERING)と呼ばれています。

 公募増資とは企業が新たに株を発行して資金を集めることです。証券会社を通じてお知らせがあるので、購入希望者はサイト上からブックビルディングに参加して購入意思を表します。購入希望者が多ければ 、 抽選などの形で購入できる投資家が選ばれます。

 立会外分売とは、大株主が株を売る方法の一つで、通常の取引所での取引以外で不特定多数の投資家に株を売ることです。こちらも証券会社がサイトなどでお知らせをして、購入希望者を募る形になります。

 公募株も立会外分売も、すでに株式市場で取引されている銘柄ですから、わざわざこうした形で購入しなくても通常の市場取引で株を購入することも可能です。

 しかし、POや立会外分売では、その時の時価よりも数パ一セントディスカウントされた値段に決まるのが普通で、購入時の売買手数料もかからないというメリットがあります。

IPO株(新規公開株)の仕組みと申し込み方

IPO株の上場前における公募株の入手の仕方について見ていきましょう。

 

 

IPO株の申し込み方

 IPOとはINITIAL PUBLIC OFFERINGの略で、株式の新規公開のことです。株式の新規公開というのは証券取引所で売買できるようになることで、新規上場するともいいます。

 会社が株を証券取引所に上場するためには、財務面など取引所の定めた条件を満たした上で、証券取引所に新規上場の申請をし、審査で合格することが必要です(詳細は東京証券取引所ホームページ参照)。

 新規上場する会社は、上場前に株の公募・売出しを行います。株の公募・売出しというのは新規に株を発行して不特定多数投資家に購入してもらうことです。

 幹事証券となった証券会社が募集を行い、ブックビルディングが行われます。ブックビルディングとは、その株を欲しがる人たちにどのくらいの株価で何株欲しいかという需要を聞き出すものですが、これが事実上の申し込みになります。

 人気がある株の場合には、幹事証券が設定したブックビルディング価格の上限で中し込んだ人たちで抽選することになります。 人気のある株の場合には抽選倍率が何百倍にもなるケ一スも珍しくなく、なかなか入手できないのが実情です。

 

 

IPO株情報の見方①概要

 IPO株に関する情報は証券会社のサイトにも出ていますし、インターネット上では様々なIPO株情報を見ることができるサイトがあります。その代表的なサイトが「東京IPO」です。

 

その中の一例を見てみます。

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 公開予定日は、株式市場で売貿が開始される日です。

 主幹事は、IPOの幹事証券会社の中でも仕切り役の証券会社であり.公募株の割り当てを最も多く握ります。幹事証券会社各社への割り当て分の公募株は、その証券会社の申し込みでしか手に入れることはできません。ですから、一般的には、公募株を手に入れるには主幹事証券に申し込みをするのが一番可能性の高い方法となります。ただし、そのために口座を開いて入金をしても、実際に公募株を入手できる確率はかなり低くなります。

 ブックビルディングは先ほども述べたように事実上の公募株への申し込みです。主幹事証券はこのブックビルディングを集計して公募価格を決めますが、人気ある株は上限で決まるのが普通です。そして、上限価格で申し込んだ人の中から抽逝などで当選者が決まります。

 仮条件は、ブックビルディングに申し込む時に記入する希望購入価格の範囲です。この範囲で希望価格を申し込めます。

 このケースについては上限の3420円で決まったということになります。

 

 

IPO株の情報の見方② 幹事証券の割り当て

 下の圃像は、幹事証券の一覧と、各社の割り当てのシェアです。

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 この銘柄については、主幹事の証券会社が85%と圧倒的な割り当てを確保しています。 幹事証券に入っていない証券会社からは、この株の公募株は購入できないということになります。

 

 

IPO株の情報の見方③銘柄一覧表

 下の図はIPO株の一覧です。上場する日程順に銘柄が掲載されています。

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 初値というのは上場して最初についた値段です。ざっと銘柄を見渡していただくと、公募価格→初値は、上昇しているものが目立ちます。相場状況にもよりますが、一般的には公募株を手に入れられれば、初値ではある程度値上がりが期待できることが多いようです。人気株になると、何倍かの値上がりになることもしばしばあります。

よくある質問と回答:信用取引は必要か?

質問
 信用残、日証金残のデ ー タをどのように投資に活かしたらいいのかよくわかりません。

 

回答

 これらの情報の基本的な見方はすでに述べた通りですが、買い残が増えると翌日以降の売り圧力に、売り残が増えると翌日以降の買い圧力になります。たとえば激しく乱高下した日の夜に日証金残を見た時に、融資残(買い残)が大きく増えて、貸株残(売り残)が減っていたら、この株を手がけている短期トレーダーたちの間には「明日は下がりそうだな」という予測が広がって、翌日はドッと売りが優勢な状態で攻防がスタートする可能性があります。ただし、信用残や日証金残は、あくまでも短期的な株価動向予測に使うための1つの材料に過ぎません。中長期投資にとってはほとんど必要ない情報ですし、短期トレードする場合にも必要不可欠な情報とまではいえません。たとえ短期トレードであっても、投資判断の材料としては株価トレンドの方が大事です。信用残はあくまでも補助的な判断材料と考えておいて良いでしょう。

 

 

質問

 リーマンショックの時のように経済状況が悪い時もあるので、やはり信用売りはやるべきでしょうか。

 

回答

 確かに、信用売りをすれば、相場が下げトレンドの時にも収益機会を見つけることができます。

 しかし、本来、株式投資というものは株を買うことで収益を求めるものですし、リスクとリターンの比率ではもともと買い手に有利なしくみになっています。人には得意や不得意もありますので、あえてしっくりこない手法を使うことはありません。「買い」の方で自信が持てる銘柄がある時だけ投資をして、そうでない時はウォッチすることに徹する、というのも立派な戦略です。ただし、何事も慣れや努力で克服できる、という面もあります。少しの金額で信用売りにトライして、ある程度慣れておくというのも、何かの際に役立つかもしれません。万一経済危機のようなことが起きた時に信用売りで培った感覚やノウハウが役立つことも考えられます。

追加保証金(追証=おいしょう)について

建玉が含み損を抱えると委託保証金の評価が下がり、委託保証金が最低維持すべきラインを割り込んでしまうことがあります。その場合、追加の委託保証金を求められます。

 

 

追証が発生するとどうなるか

 「委託保証金30万円、建玉100万円」という状況で建玉に15万円含み捐が出たら、委託保証金の評価額は30万円ー15万円=15万円になります。そして、委託保証金率は15万円 ÷100万円=15%となります。

 委託保証金率は最低20%を維持しないといけないことになっています。この委託保証金率の水準を最低委託保証金率といいます。

 最低委託保証金率を割り込んだ場合には、翌々日までにこの水準を回復させる必要があります。その方法は、

  • 追加で委託保証金を入れる
  • 建玉を決済して減らす

などの方法があります。

 追加の委託保証金のことを一般的に追証(おいしょう)と呼びます。

 また、最低委託保証金率を割り込むことを一般的に「追証が発生する」といいます。追証が発生すると、証券会社からメールなどで連絡が来て、最低委託保証金を回復させるように通達されます。それを期日(通常は翌々日)までに実行しないと、建玉は証券会社によって強制的に決済させられることになります。

 追証発生して建玉決済に追い込まれると、資産は壊滅的に減少してしまうことがほとんどです。大抵の場合、追証が大量発生する時が相場の底になることがあり、そこで強制決済させられると、本来は「絶好の買いチャンス」になるポイントで売らされてしまうことになるからです。

 

*最低保証金率の水準は、証券会社によっては20%より高い水準(たとえば30%)を設定しているところもあります。信用取引を利用する証券会社こ•との )レールをホームページなどでよく確認しましょう。

 

追証の大量発生に伴う売り、という現象があります。株価がだいぶ値下がりした状態でさらに急落するとその日に大量の追証が発生して、翌朝にそのための決済売りが出て株価が一段と下がる、という現象です。これは、相場観に基づく売りではなくて、強制的な売りなので、理屈なく投げ売りしてくる傾向があります。こうした局面は得てして絶好の買いチャンスになります。投げ売りする側ではなく、ぜひ、投げ売りを拾う側に回りましょう。

委託保証金率のルー ル

 信用取引で証券会社に差し出す担保のことを委託保証金といいます。この委託保証金にまつわるルールについて整理しましょう。

 

 

委託保証金とは信用取引の担保のこと

 委託保証金には現金もしくは証券を充てることができます。株、債券、投資信託などの証券を委託保証金に充てる場合、それらは代用有価証券と呼ばれます。

 代用有価証券は値段が一定ではないので80%〜60%の掛目をかけて委託保証金としての価値を計算します。この掛目は証券会社ごとに決められます。変動リスクが高いと判断された銘柄は低い掛目の設定となりますし、実際に価格が下落すれば担保価値も下がります。また、途中で掛目が変更されてしまうこともあります。その結果担保が足りなくなって、追加保証金が求められる可能性もあります。

 信用取引で買い建てたものを賀い建玉(たてぎょく) 、 売り建てたものを売り建玉といいます。買いと売りとを合わせた建玉の合計金額(約定金額ベ一スで計算)に対する委託保証金の割合を委託保証金率(または委託保証金維持率)といいます。

 たとえば 、 委託保証金が30万円で、 建玉50万円の場合、委託保証金率は60%となります。 さらに建玉を40万円増やすと 、 建玉合計は90万円で委託保証金率は33%。さらに建玉を10万円増やすと 、 建玉合計は100万円となり、こ れで委託保証金率は30%。もうこれ以上建玉は増やせません

「委託保証金 = 0.3」という計算で 、 建玉の最大金額が計算できます。

 

*ここでは説明のために委託保証金率が60%や30%などの事例を出していますが、この率が100%以下というのはかなり危険性が高い状態です。自己資金の全てを株式にするというのもリスクがそれなりに高いのですが、それでも委託保証金率100%に該当する状況です。この率が100%以下ということは、自己資金を超えた株式を保有するリスクを抱えている状態だということを、くれぐれも認識しましょう。

 

建玉が含み損を抱えた場合の委託保証金率は

「委託保証金30万円、買い建玉100万円、委託保証金率30%」という状態で、買い建玉の株価が10%下落したとします。この場合、委託保証金率はどうなるでしょうか。 買い建玉は10万円の含み損を抱えますが、建玉は売りも買いも約定金額ベ一スで計算するので100万円のままで変わりません。

 含み損の10万円は委託保証金から差し引くことになります。ですから、委託保証金の評価額は30万円ー10万円=20万円となります。

 ということで、委託保証金率は20万円7100万円=20%ということになります。

 なお、建玉が含み益を抱えた場合には、委託保証金の評価額に変化はありません。含み損を抱えた場合だけ、その分を委託保証金の評価頷から差し引くことになっています。

 代用有価証券の価格が変動したり掛目が変更になった場合には、委託保証金の評価は増額または減額されます。

 

信用取引というのは、ようするに「借金して株を買っている」状態です。借金した株が下がっても借金は減りません。買い建玉が値下がりしても、委託保証金率の計算に使う建玉合計は約定ベ一スの金額から減ることはありません。借金は返済しない限り減らない、というのと同じ理屈です。損している金額は、あくまでも自己資金(差し入れている保証金)から差し引かれるのです。

貸借取引

 貸借取引とは、証券会社が証券金融会社から制度信用取引に必要な資金や株券を調達する取引です。その仕組みを見ていきましょう。

 

専門の金融機関を通して行われる信用取引

 証券会社は顧客から信用取引の注文を受けると、まずは自社内の勘定で対応しようとします。信用買い注文に対して融資できるお金があれば自社で融資しますし、信用売り注文に対して貸せる株を持っていればそれを貸し出します。

 しかし、融通するお金が足りなくなったり、貸し出せる株がなかったり、ということもあります。特に株については1つの証券会社が幅広く品ぞろえしておくというのは無理な話です。

 そこで証券会社は、信用取引に関する専門の金融機関である日本証券金融などに資金や株を融通してもらいます。

 日本証券金融は、大株主から株を借りるなど、幅広く株の調達ルートを持っています。

 日本証券金融は資金や株の貸付の際に、証券会社に代わって資金や株を証券取引所の決済機構に引き渡し、その見返りに買付株券や売り付け代金を受け取り、それぞれの貸付の担保に充当します。 

 

信用取引できる銘柄とできない銘柄があり、信用取引できる銘柄を信用銘柄といいます。また、信用銘柄の中でも特に日証金が扱っている銘柄を貸借銘柄といいます。一般的に信用銘柄は信用売りができませんが、貸借銘柄なら信用売りが可能です。ただし、一般信用(無期限信用)を使えば、信用銘柄でも信用売りできるケ一スもあります。

 

 

信用残、日証金残の情報の見方

 信用残とは市場全体の信用買いと信用売りの残高のことです。投資家たちの抱えている建玉の残高が合計でどのくらいあるかを個別銘柄ごとに集計したものです。毎週水曜日の夜に発表されて、翌日のデータには反映されます。

 日証金残というのは、日本証券金融により融通された融資と貸株の残高です。要するに貸借取引の残高ですので、信用取引の一部分の残高を示したものといえます。証券会社が日本証券金融を頼らずに決済したものは残高状況に入らないからです。しかし、日証金残は取引が終わったその日の夜に毎日データ更新されるので、信用残高の動向の速報値として注目されています。

 日証金残の見方としては、「貸株」は売り残、「融貿」は買い残のことです。その残高と前日比が注目されます。

 では、信用残高はなぜ注目されるのでしょうか。それは短期的な株価の需給動向を左右する要因になるからです。具休的には、

 

 信用買い残=将来の売り圧力

 信用売り残=将来の買い圧力

 

となります。基本的に信用取引は6ヶ月以内に反対売買して決済しないといけないか らです。

 通常は買い残は売り残よりも多く、平均すると3倍くらいの差になります。

 信用買い残が信月売り残の何倍あるかを信用倍率といいます。同じく日証金の買い残が売り残の何倍かを貸借倍率といいます。

 信用倍率や貸借倍率は、普通は3倍程度のものが多いのですが、1倍を切ると信用売り残の割合が多く、信用残の面から見ると短期的な需給が比較的良い銘柄であると言われることが多いものです。

 

*信用残は株価の変動要因のごく一部にすぎません。それ以上にファンダメンタルズや、現物取引による需給要因などの方が重要だということは忘れてはいけません。短期的なマネーゲームを志向する人以外は、あくまでも参考に見ておくといいと思います。

信用取引にかかるコスト

 信用取引には結構多くの種類のコストがかかるのですが、主なものは売買手数料、金利(信用売りの場合は貸株料)の2つです。その他の細かい手数料も含めて、信用取引のコストについてざっと見ていきましょう。

 

 100万円の建玉を建て、1か月後に売却したら合計でいくらのコストがかかるのか。

 

 結論からいうと信用買いは3,000円程度、信用売りは2.000円程度のコストとなります。

 コストの主な内訳としては、そのほとんどを売質手数料と金利(信用売りの場合は貸株料)が占めています。

 その他、時折、逆日歩というコストが発生しますが、これが発生すると信用売りをしている人にとって意外に高いコストになることがあります。逆に、信用買いをしている人は逆日歩を受け取ることができます。

 

売買手数料(株式委託手数料)

 証券会社ごとに料金体系は異なり、同じ証券会社でも現物株と別の料金体系になっていることが多いものです。通常は信川取引の方が売買手数料は安くなっています。

 

金利貸株料

 信用買いをした場合には買い建て代金に対する金利、信用売りをした場合には売り建てるために借りた株に対する貸株料が日割り計算でかかります。これらの1日あたりのコストを日歩といいますが、日歩計算は以下の通りです。

 

 日歩=新規建約定代金×買・売方金利(年率)÷100×日数÷365

 

日数

新規に買い建てもしくは売り建てをした際の受渡日から、返済売りもしくは返済買いの受渡日までの期間を、その両端の日を入れて数えます。

日歩(金利)の率の決まり方

直近の金利情勢や、証券金融会社が証券会社に信用取引に関する融資を行う際の金利の動向に基づいて変動します。

 

 

信用取引にかかるコストは、その大半が売買手致科と金利(または貸株料)で、その他はごくわずか。この2つと、あとは時折売り建玉に発生する逆日歩に注意しておけばいいでしょう。

 

逆日歩
ある銘柄について信用売り用に貸し出す株が不足してきた場合に、需給調整のために証券金融会社(日証金)が随特発生させるもので、信用売りしている人から徴収して、それを信用買いしている人に支払います。その金額は需給の情勢次第で毎日変わります。