NAV倍率·FFO倍率で割高・割安を把握する
NAVとはNet Asset Valueのことで、純資産額を意味しています。NAV倍率は、 J-REITの1口当たりの投資口価格が、1口当たり純資産額に対して、割高か割安かを見るための指標です。
1.0以上だと割高
NAV倍率の計算式は以下のようになります。
NAV倍率=1口当たり投資口価格÷1口当たり純資産額
この計算式によって、上場市場でついている1口当たり投資口価格が、1口当たり純資産額に対して割高水準まで買われているのか、それとも割安水準で放僅されているのかが分かります。倍率が1.0倍以上だと割高、1.0倍未満だと割安と判断されます。
とはいえ、1口当たり純資産をどう計算すればよいのか、という問題が残ります。「純資産ってなに?」と言う人もいるかもしれません。 簡単に言えば、保有している資産の合計額から、負債の合計額を差し引いた残りが純資産です。この引き算も面倒だというならば、各不動産投資法人が発表している決算短信を見れば、そこに記載されています。
何となく、株式のPBRに似ていると思いませんか。PBRは、PriceBook value Ratioの略で、「株価純資産倍率」と言います。これは、企業の純資産(株主資本) に対して、株価が何倍まで買われているのかを示すものです。
PBRは1倍を基準にしています。これは、「PBRが1倍を下回るようなことは基本 的にない」と考えられるためです。とはいえ、PBRが1倍割れを起こす企業は出てくるもので、それは株価が割安な水準まで売られていることを意味します。 「NAV倍率が1倍を割り込む」とは、どういうことかというと、あくまでも理論上の話ですが、NAV倍率が1倍割れとなったJ-REITの投資口を全て市場で買いつけ、それに組み入れられている不動産物件を全部売却すれば利益が得られるわけです。それだけ、J-REIT市場において、割安に放置されていることを意味します。
では、実際にNAV倍率を見てみましょう。2017年12月12日時点の数字ですが、NAV倍率が最も高いのは「アドバンス・レジデンス投資法人」の1.28倍。逆に最も 低いのは、「ジャパン・シニアリビング投資法人」の0.79倍でした。ちなみに、東証に上場されているJ REITは全部で59本ですが、このうちNAV倍率が1倍を超えている銘柄の数は27本でした。つまり半分以上が1倍を割り込んでおり、純資産額に対して、投資口価格が割安に放置されていることになります。
FFO倍率にも注目
J-REITの投資尺度は、NAV倍率以外にもあります。FFO倍率はその代表です。
NAV倍率が株式でいうPBRなら、FFO倍率はさしずめPERというところでしょう。
FFOとはFundsFrom Operationの略で、以下の計算式で求められます。
こうして求められたFFOを発行済投資口数で割ると、1口当たりのFFOが求めら
れます。
FFO倍率=投資口価格÷1口当たりFFO
この計算式で、FFO倍率が求められます。FFO倍率は、そのJ-REITが生み出す
キャッシュフローのことを指しています。
FFO倍率は、高いほど割高水準に投資口が買われていることになります。逆に、
低いほど割安ということです。
J-REITをはじめとする不動産を投資対象に組み入れることは、分散効果を高める
うえで大きな効果があります。また、「預貯金だけでは資産が増えない」と思っている人にとっては、安定的な分配金を得られることも大きな魅力と言えるでしょう。
不動産という資産クラスに少額から投資できるJ-REITやREITファンド。その仕
組みを正しく理解したうえで賢く組み入れていきたいものです。
*FFO倍率を見て投資判断を下すときは、他の不動産投資法人のFFO倍率も比較するとよいでしょう。できれば全銘柄のFFO倍率を計算し、その平均値を求めれば、自分が投資したいJ-REITのFFO倍率が、平均値よりも低ければ割安、高ければ割高という判断を下すことができます。