投資信託にかかる税金と非課税制度

 投資信託の運用で得た収益に対する税金は、預貯金などと同じく20.315%が源泉分離課税されます。ただし、つみたてNISAや確定拠出年金投資信託を選べば、一定の枠内で運用収益が非課税になります。

 

値上がり益にかかる税金

 投資信託の運用によって得られる収益には、基準価額の値上がり益と、決算日ごとに受け取れる分配金の2種類があります。 このうち基準価額の値上がり益については、20.315%が源泉分離課税されます。たとえば、基準価額が1万2,000円のときに購入し、1万4,000円で解約した場合は、値上がり益が2,000円なので、その20.315%が税金になります。つまり手取りは1,594円になります。

 もし長期的な運用によって1,000万円の利益が生じたとしましょう。税金を計算してみてください。1,000万円に対する20.315%は、203万1,500円にもなります。これ、かなり大きいと思いませんか。

 たとえば、毎月3万円ずつ投資信託の積立投資を行い、年平均のリターンが5%だったとしましょう。積立期間は30年間です。これがい<らになるかというと、2,496万7,759円です。条件から見ても、これは十分に達成できる金額といってもよいでしょう。

 問題はその先です。2,496万7,759円を、元本部分と収益部分とに分けると、元本部分は1,080万円。収益部分は1,416万7,759円になります。したがつて、収益部分に課税した税額は、287万8,180円ですから、最終的に投資家の手元に残るお金は、2,208万9,579円になります。こうしてみると、20.315%という税率は個人投資家にとってかなり負担の大きいものと言えるでしょう。

 

 

普通分配金と特別分配金

 ー方、少し複雑なのが分配金への課税です。というのも、分配金は課税対象になる普通分配金と、非課税扱いになる特別分配金があるからです。

 たとえば、基準価額が1万2,000円のときに投資信託を購入し、基準価額が1万2,500円まで値上がりしたところで決算日を迎え、1,000円の分配金が支払われたとします。このとき、投資信託の基準価額は、1万1,500円まで値下がりします。 この場合、購入したときの基準価額が1万2,000円なのに、分配金が支払われて1万1,500円に値下がりし、しかも1,000円の分配金に対して20.315%が課税されたとしたら、実際に得た収益分配は500円なのに、自分が購入したときの元本の一部まで収益とみなされて課税されるのは、不公平だと思うはずです。

 だから特別分配金があるのです。

 上記の計算で言うと、基準価額が1万2,500円まで値上がりしたところで1,000円の分配金が支払われたわけですが、この人の購入時の基準価額は1万2,000円なので、純粋な運用収益部分は500円になります。そして残りの500円は「元本の払い戻し」という解釈になり、この部分を特別分配金として、非課税扱いにされるのです。したがって、このケ一スでは、課税対象となる普通分配金は500円で、これに対して20.315%が課税されることになります。 

 

 

収益に対する非課税制度を活用する

 ところで、20.315%という税率は、決して低くはありません。できることなら収益に対する課税はなしで長期投資ができれば、より大きく増やせるのではないかと考えるのも、当然のことでしょう。 そこで活用したいのがiDeCoに代表される確定拠出年金やNISAといった非課税制度です。 投資信託を購入するにあたっては、収益に課税される一般口座と、課税されない非課税口座があります。当然、資産運用をするうえでは非課税口座が有利ですが、有利な分だけ条件があり、投資できる金額に上限が設けられています。 NISAは年間120万円を上限にして、5年間で最高600万円までの非課税枠が認められています。ただし、口座開設可能期間が2023年までなので、利用できる期間は限定されますが、基準価額の値上がり益と分配金に対して非課税枠が認められています。なお、NISAの主な非課税対象は、株式ならびに株式型投資信託の値上がり益と、配当金および分配金になります。 また2018年1月からは、「つみたてNISA」という、NISAから派生した新しい制度がスタートしました。こちらは株式型投資信託のみが対象で、投資金額の上限は年間40万円というように、一般のNISAに比べて上限額が少なく抑えられています。その代わり、制度自体は2038年までの20年間になります。一般のNISAは2023年以降、口座を開<ことはできませんが、つみたてNISAを利用すれば、一般NISAに比べて15年間も長く非課税制度を活用した運用ができるのです。

 

 

iDeCo
個人型確定拠出年金の愛称。従来、個人型確定拠出年金の加入者は、自営業者、および企業年金制度のない企業に勤務している従業員に限られていましたが、2017年1月以降、専業主婦や公務員も加入対象者に含まれ、国民年金に加入している人は基本的に誰でも加入できる制度になりました。ただ、企業型確定拠出年金は、自分が勤務している企業が同制度を導入している場合、ほぼ強制的に加入させられるのに対し、 iDeCoの加入は任意なので、自分で運営管理機関(窓口となる金融機関)を選び、加入手続きを取る必要があります。

 

 

確定拠出年金の活用

 また、確定拠出年金投資信託の値上がり益や分配金を非課税にできる制度です。確定拠出年金の場合、勤務先の企業が導入していれば企業型に加入する形になりますが、制度がない企業、あるいは自営業者や専業主婦、公務員の場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入できます。企業型は、その会社の従業員である限り、ほぼ強制的に加入しますが、iDeCoの場合は個人の任意です。

 確定拠出年金の最大のメリットは、長期にわたって非課税メリットが享受できることです。企業型の場合、掛金は損金扱いになり、従業員が自らの判断で運用して得た収益に対しても非課税になります。またiDeCoの場合も、運用によって得られた収益は非課税扱いで、かつ掛金については所得控除が受けられます。 そして、これは企業型、iDeCoの両者に当てはまりますが、60歳になった時点で掛金の拠出が終わり、一時金もしくは年金として受け取るに際しても、各種控除が受けられます。 反面、60歳になるまで、例外的にしか解約が認められないという点が、デメリットのひとつになります。もし、いつでも解約できるという点を安心材料として持っておきたい場合は、NISAを活用したほうがよいでしょう。