投資スタイルに合わせた活用法
ETF は売買のたびに売買委託手数料が掛かることや、信託報酬が安いことから、長期保有に向いている金融商品です。しかし、株式市場に上場しており、常に取引価格が推移しているという仕組み上、短期トレーディングに活用することもできます。
前述したように、ETF は未上場の投資信 託に比べて信託報酬の料率が低いため、ローコストで長期保有できます。したがってETFは、長期の資産形成をするうえで、強力な武器になります。
ただ、その一方でETFは、株式と同じ扱いになっているため、株式投資と同じように信用取引を活用することができます。これにより、短期のトレーディングにも活用できるようになります。
信用取引を用いると、証券会社に預ける証拠金に対して、3倍のレバレッジでポジションを作ることができます。たとえば証拠金として現金 100万円を預けた場合、それを担保にして 300万円超まで ETF を買うことができるのです。3倍のレバレッジを掛けると、証拠金に対する利益率も 3倍 になります。 たとえば、買いつけた ETF が10%上昇すると、証拠金に対して 30% の利益が得られるのです。ただし、より高いリターンを狙おうとすると、その分だけリスクも高まります。レバレッジを 3倍 にして買いのポジションを持ち、買いつけた ETF が 10% 値下がりすると、証拠金に対して 30% の損失が生じます。 このように、レバレッジを掛けると、少額の証拠金でより大きな金額のポジションが持てるため、高いリターンが狙えるなど投資効率は上がりますが、値下がりしたときのリスクを考えると、両刃の剣ではあります。ただ、そのリスクを想定したうえで信用取引を活用すれば、短期的なリターンを狙うことができます。
加えて、信用取引は買いだけでなく、売りのポジションを持つこともできます。たとえば目先、日本の株価が下落すると考えるなら、信用取引で日本の株価に連動するETF を売るのです。 そして、想定通りに値下がりしたら、そこで売った ETF を買い戻します。これによって値下がりが利益につながります。
このように、信用取引口座で ETF を売買すれば、レバレッジを掛けることも可能ですし、マーケットが下落局面に入ったときでもリターンを狙うことができます。ETF + 信用取引によって、短期間で生じる相場の波を捉えるトレードも可能になるのです。
レバレッジ型、インバース型で相場の波を捉える
信用取引口座をわざわざ作るのが面例だという人もいるでしょう。それでも、ETF で短期トレーディングする方法はあります。
ETFのラインナップには.「レバレッジ型」と「インバース型」があり、これらはもっぱら短期トレーディング用のETFと考えて差支えありません。
レバレッジ型とは、日経平均株価や東証株価指散などの株価インデックスの値動きに対して、取引価格が2倍程度のレバレッジを掛けたのと同様の動きをするETFです。たとえば、日経平均株価が10%上昇すると、レバレッジ型ETFの取引価格は20%上昇するという仕組みになっています。
これだけ聞くと、長期保有にも活用できそうに思えるかもしれませんが、実はそこには落とし穴があります。 レバレッジ型ETFが長期投資に向かないのは、保有期間が長くなるほど、レバレッジの効果が希薄化されるからです。レバレッジは、あくまでも前営業日の価格に対して掛かります。たとえば
100→ 70→ 80→ 60→ 105
というように取引価格が推移したとします。100から105ですから、2倍のレバレッジだと110になるはずです。でも、レバレッジ型ETFの値動きは、次のようになります。
100→ 40→ 51→ 25→ 63
いずれの数字も小数点以下は切り捨てで計算しています。2倍のレバレッジはプラス方向だけでなくマイナス方向にも作用しますから、下落率は2倍になります。こうして連動目標であるインデックスが上がり下がりを繰り返すと、長期的に見たときは、レバレッジの効果が希薄化してしまうのです。したがつて、レバレッジ型ETFを売買する際は、できるだけ短期間で損益を確定させないと、レバレッジ型ETFを購入する意味が無くなってしまうのです。
インバース型とは、株価インデックスの値動きとは逆方向に取引価格が動くETFです。たとえば、株価インデックスが10%上昇すると、インバース型ETFの取引価格は10%値下がりします。逆に、株価インデックスが10%値下がりすると、インバース型ETFの取引価格は10%値上がりします。
このように、レバレッジ型やインバース型のETFを活用すれば、信用取引口座を開設しなくても、それとほぽ同等の投資効果を得ることができます。実際、この手の ETFは、短期トレードを行っている個人のデイトレーダーにも人気で、日々の取引高でも常に上位にランクインしています。 ETFを賢く活用していくうえで大切なのは、自分の投資スタイルに合わせた銘柄を選び、売買していく、ということです。また、投資資金が少ないのであれば、手数料で資金を目減りさせないためにもあまり頻繁に売買をしないほうが効率的ですし、 NISA口座を活用するのであれば、年間の非課税枠を踏まえたうえで考えていく必要があります。
ETFの仕組みや種類をしつかり把握したうえで、自分にとってベストな方法で活用していきましょう。