投資信託会社の役割

 日本で投資信託を設定・販売している投資信託会社は約100社。これに不動産投資信託の運用会社を加えると200社近くになります。投資信託会社がどのような役割を果たしているのか考えていきたいと思います。

 

 

運用の指示を出す

 投資信託会社のメイン業務は、投資信託の運用をすることです。よくある誤解が、「投資信託は証券会社が運用している」というものです。かつて投資信託は証券会社しか販売しておらず、さらに言えば、証券会社がお金を集めて以降、そのお金がどういう流れで運用されているのかあまり知られていなかったことが原因と考えられます。証券会社は投資信託の販売金融機関にすぎません。

 投資信託会社は投資信託という金融商品の中核的な存在で、投資信託の企画立案から運用指図、その運用指図を行うのに必要な各種リサーチ、基準価格の計算など、投資信託を運用するのに必要なすべてのオペレーションを担当します。

 投資信託という商品がこの世に出てくるまでの流れは、ます商品企画部が新商品を企画するところから始まります。商品企画に際しては実際に運用を担当する部署も加わり、新商品の内容が運用面で問題がないか検討したり、販売金融機関も企画立案に関わったりするケースもあります。そしてこの段階で新商品の投資対象、運用方針などがルールに違反していないかどうかも綿密にチェックされます。こうして様々な問題がクリアできたら、所轄官庁である記入長に届け出をし、販売金融機関の営業スタッフに商品の説明をするなど、顧客対応の準備を進めます。そして一定の募集期間を経て設定日を迎えます。つまり、設定日とは投資信託の運用が開始された日ということになります。

 

 

運用に関わる3つの担当者

 基本的に運用は3つの担当者で成り立っています。ファンドマネージャー、トレーダー、アナリストです。

 アナリストは企業リサーチの担当者です。企業の財務諸表、業績の数字を読み解くとともに、企業に足を運んで生の情報を収集します。

 ファンドマネージャーも、アナリストとともに企業に足を運んでリサーチしたり、投資のアイデアを考えたりします。投資信託をマネジメントする人ですから、マーケットに大きな変化が起こった時でも運用成績が安定して推移するよう、ポートフォリオ全体のバランス取りを行い、組み入れ資産の売買指示をトレーダーに出します。どの企業に投資するか、どのタイミングで投資するかも含め、運用全般の判断に関わると同時に、責任を持つのがファンドマネージャーです。

 トレーダーはファンドマネージャーからの指示を受け、実際の売買注文を信託銀行に指示します。投資信託の場合、1銘柄に対する売買注文の額が大きくなるため、入ってきた資金の全額で買いに行ったり、解約注文があった分、全額を売りに行ったら株価が乱高下してしまい、投資信託の運用成績に影響します。そのため、その日、その日の株式市場における出来高などを見て、きめ細かく売買注文の指示をするのがトレーダーの役割です。

 

 

ファンドマネージャーの1日

 ファンドマネージャーという名前を聞いた時、どのようなイメージを持つでしょうか。中には1日中パソコンの画面に張り付き、株価を凝視しているようなイメージかもしれません。

 証券会社に所属しているディーラーの場合、中にはそういう人もいるでしょう。ディーラーとは証券会社の自己資金を運用して増やす人たちのことですが、ファンドマネージャーの投資行動はディーラーとは大きく違います。

 まず、投資する時間軸が違います。ディーラーは最近でこそ投資スタイルが多様化し、中長期のポジションを持つことも増えていますが、かつてのディーラーは単騎で売り買いを繰り返して値ざやを狙うタイプが中心でした。言うなれば値動きに投資するのがディーラーです。

 これに対してファンドマネージャーは1日十株価に張り付いて売買するようなことはしません。値動きに投資することはないのです。その代わりに企業リサーチに時間をかけます。ファンドマネージャーが投資するのは絵動きではなく、その企業が持っている価値そのものになります。将来企業の価値が増大すると思われる記号の株価が割安なうちに購入し、長い時間軸で企業価値が育つのを待つのです。

 企業価値を見極めるためには徹底した企業リサーチが必要になります。バランスシートや損益計算書など、企業のストックとフローの状況を示す数字をチェックし、さらに企業の経営者、財務担当者にインタビューし、現場にも足を運んでじっっ際にその企業が提供している製品、サービスを自分でも使ってみて、これからその会社の売り上げと利益が伸びるかどうかを様々な観点から分析するのです。こうして、投資候補となっている企業の価値が将来上がると判断できたら、今の株価がその価値をどの程度織り込んでいるのかをチェックします。ほとんど織り込んでいない状況であれば、株価は割安と判断できるので、そこで初めて投資を決断します。

 ただし、ファンドマネージャーの1日は担当している投資信託の種類によっても違ってきます。例えば海外市場に投資する投資信託ファンドマネージャーの場合、多くは海外の運用会社に運用を再委任していますし、そもそも日本株式はほとんど組み入れていないので、企業リサーチも必要ありません。どちらかといえば再委託先となっている海外の運用会社がきちんとオーダー通りに運用しているかどうかをチェックするのにかなりの時間を費やしたりしているようです。

 また、投資信託にはアクティブ運用以外の様々なタイプが存在します。例えばインデックス運用といって日本平均株価や東証株価指数に連動させるタイプの投資信託をt南東しているファンドマネージャーは、アクティブ運用のファンドマネージャーのように企業リサーチをする必要がありません。どちらかといえば投資信託の運用成績が連動目標とする株価インデックスと大きく乖離しないように日々の資金管理をしながら、いかに高い精度で運用成績を連動させるかということの研究に日々の時間を費やしています。

 

*再委託

特に海外市場に投資するタイプに見られる運用の一形式。投資信託会社は投資信託を通じて受益者から運用の委託を受ける立場ですが、それをそくりそのまま海外の運用会社に委託することから再委託と言われます。日本の投資信託会社は海外に調査拠点を持たないケースが多いため、再委託という形式を取るケースが多く見られます。

 

投資信託会社の種類

 投資信託会社は、国内証券会社系、国内銀行系、国内保険会社系、独立系、外資系に分かれます。いずれもどこがメインで資産を出しているかということで、例えば国内証券会社系であれば国内の証券会社がメインの出資者になっています。メインの出資者が証券会社であることは、販売に際しても非常に効率的です。なぜならもっぱら親会社の販売網を使って売ってもらえば、資金が集めやすいからです。ですから従来の投資信託会社は大半が国内証券会社、国内銀行系など大手金融機関が親会社でした。

 また、「直接販売(直販)」と言って投資信託会社が自ら自社運用の投資信託を顧客に販売するケースもあります。投資信託会社による直接販売はいわゆる「独立系」として括られたいくつかの投資信託会社によって注目を集めました。積み立て投資の比率が高く、販売手数料を取らないローコストな投資信託が評判となり、個人の支持を集めました。しかし、最近の傾向は金融機関と資本関係を結んだり、金融機関を通じて販売する投資信託会社も増えています。「独立系」でも「直販系」でもないという中途半端な状況とも言えるのが現状です。