受託銀行の役割

 受託銀行とは投資信託会社と契約を結んでいる銀行のことで、主に信託業務を行う銀行がその任につきます。受託銀行は投資信託の組み入れ資産の安全性を確保・維持する上で重要な役割を持っています。

 

受託銀行の主な役割は3つ

 「受託銀行」東夷名称は銀行の一業態を示すものではなく、あくまでも受託業務を営むことができる銀行のことを指しています。したがって信託銀行ではなくても、例えばメガバンク地方銀行が本体として信託業務を営み、投資信託の受託業務に参入することが可能です。

 

 なぜ、投資信託の仕組みで受託銀行が必要なのでしょうか?

 販売金融機関がお金を集め、それを投資信託会社に渡して、そのまま運用してもらう方がシンプルにも思えます。しかし、大勢の人たちから集めた資金の安全性を保持するには、受託銀行の存在は不可欠です。

 受託銀行は投資信託という仕組みの中で、3つの業務を行なっています。

  1. 組入有価証券の売買の実務
  2. 投資信託の組入資産の保管・管理
  3. 組入資産の計算

 前述したように投資信託の組入資産の売買注文は、投資信託会社のファンドマネージャーが判断し、トレーダーがそれを指示します。そしてトレーダーから受託銀行に「どの銘柄を10万株買い、どの銘柄を5万株売り」というような指示が出ます。そして受託銀行の担当者はその指示を受け、実際に証券会社に売買指示を出します。投資信託の運用については、投資信託会社が銘柄の選定から売買注文を出す実務まで一手に引き受けているかのような誤解もありますが、売買注文の実務は受託銀行が担っています。

 次に、販売金融機関を通じて投資信託が販売された後、その購入代金はまず販売金融機関の顧客鋼材に入ってきます。ただ、この買付代金は、そのまま販売金融機関の口座に停滞することなく、すぐに受託銀行の分別勘定口座に移されます。また、投資信託に組み入れられている株式や債券難度の有価証券も、受託銀行の名義になって、全て受託銀行の管理下に置かれています。

 分別勘定口座とは、受託銀行の保有資産とは分けて管理される口座のことで、この仕組みがあるからこそ、投資信託の資産の安全性が担保されるのです。言うなれば投資信託の金庫番のような役割です。当然、分別勘定口座に入れられた資金を受託銀行が自身の利益目的で勝手に使うことはできませんし、それは投資信託会社にとっても、販売金融機関にとっても同じことです。

 また、運用が行われている最中は、組み入れ資産の値動きによって、その価値は常に上下しています。受託銀行はs、投資信託に組み入れられている資産の時価から利金や配当金の額を加味し、さらに信託報酬や監査費用などの経費を差し引いた上で、個別の投資信託ごとに基準価格を計算していくのです。

 ちなみに、基準価格の計算は受託銀行だけでなく、投資信託会社も行なっています。もちろん計算方法は全く同じで、両者が最終的に計算した数字をすり合わせ、間違いないことが確認された時点で、販売金融機関やマスコミに基準価格が発表されるのです。

 

 

投資信託は日々、信託報酬を純資産から引き落としています。信託報酬は投資信託会社と受託銀行がそれぞれの仕事の報酬として受け取る部分と、販売金融機関の代行手数料というもので構成されていますが、基本的に受託銀行の取り分は最も少なく、年率0.1%程度です。

 

 

基準価格の公表は夕方

 受託銀行が投資信託会社とともに計算する基準価格は前述した通り、受益権1口あたりの純資産総額です。現状、基準価格の公表は、その日のマーケットが終わってから、終値をベースに計算されることになっているため、例えば日本株式を組み入れて運用している投資信託の場合、基準価格は午後3時に国内株式市場の取引が終了してから計算されます。そこから投資信託会社と基準価格をつき合わせ、間違いがないかどうかを確認するため、その日の基準価格が産出されるのは夕方以降にさらざるを得ないのです。