投資と貯蓄の違い

 投資も貯蓄も、「将来に向けて資産を増やす」という意味では同じ行為です。ただ、貯蓄はどちらかというと安全性が高く、その分だけ収益性は低いものであるのに対して、投資は元本割れのリスクがあるものの、リターンは貯蓄に比べてはるかに高いものが期待されます。

 

リスクを誰が背負うのか

 貯蓄は、主に原稿が扱っている定期預金を通じて行われる利殖行為です。預金すると一定期間後に「利息」が得られます。では、なぜ利息が発生するのでしょうか。

 預金を通じて集められたお金の多くは企業への融資に回されています。企業は金融機関から借り入れたお金で設備投資などを行い、利益を上げ、約束の期日までに借り入れたお金の元本に利息をつけて返還します。この金利の一部が預金の利息になります。銀行が行なっていいる融資は、株式や債券のような有価証券への投資ではありませんが、実質的には銀行が行なっている投資のようなものです。こうして銀行は融資業務を通して多くの預金者から集めたお金を運用しているのです。

 また、一部の資金は金融機関自体が投資に回しています。デイトレーダーのように頻繁に売り買いをしているわけではありません。もちろん、株や債券を対象としていますが、その比率は低く、比較的長期の視点で投資を行なっているようです。

 ただし貸出先が破綻して貸し出した分が焦げ付いたり、投資がうまくいかなかったりする場合もあります。金融機関にとっては損失ですが、その損失を預金者に転嫁することはありません。預金はそれを扱っていいる金融機関が元利金の返済を預金者との間で約束しているため、差し出し先の破綻によって生じた損失は銀行が負担します。したがって、預金は元本が保証されているものの、金融機関が貸し倒れのリスクを背負う分だけ利息の水準が低く抑えられているのです。預金者からすれば確実に収益が得られるものの、投資に比べて期待されるリターンは小さくならざるを得ません。

 

 一方投資ではどうでしょうか。例えば株式投資の場合、株価は売り手と買い手の需給で上下し、投資した時の株価よりも値下がりすれば損失が生じ、そのリスクは全て投資した投資家が背負います。とはいえ、株価の値上がりには上限が設けられてはいないので、その株式への関心が高まれば高まるほど、株価は大きく上昇します。株式投資で期待されるリターンは非常に大きくなる可能性を秘めているのです。

 

 極端に言ってしまえば、貯蓄のリスクは金融機関が背負うため、預金のリターンは低く、投資のリスクは投資家本人が背負うため、期待されるリターンは貯蓄に比べて高くなる、ということです。

 

 

なぜ投資をする必要があるのか

 日本人は一般的に貯金が好きです。これは個人金融資産に占める預金の比率を見ればわかります。2017年9月末の時点で個人金融資産は1845兆円です。このうち現金および預金の額は943兆円で51.1%にもなります。それだけ多くのお金が預金に集中しているのです。

 なぜこれだけ多くのお金が預金に集中しているのかというと、長年にわたって日本では預金においておくだけでも、ある程度豊かな資産を築くことができたからです。バブルが完全に崩壊する前、1991年の定期預金金利は5.78%

出会ったことからもわかるように、日本は高い経済成長を背景にして金利水準は今と比べてはるかに高い水準で維持していました。つまり、預金にお金を置いておくだけで、劇的に増えることはないにしても普通にお金が増えていったのです。

 

 しかし、現在は定期預金の金利は0.01%まで下がり、経済も成熟期に入り給与の増加も期待はできません。さらに、年金財政の悪化に伴い、今後は70歳まで公的年金が支給されない可能性もあります。かつて、投資は一部のお金持ちが行うものとされていましたが、現在は自分の将来を守るための必須スキルです。そして誰でもできる投資として投資信託があるのです。