自己資本比率と有利子負債

 投資家が企業を見て判断する時には、収益性に加えて財務体質をチェックする必要があります。その際の代表的な指標と項目が自己資本比率と有利子負債です。

 

 

貸借対照表の基礎

 企業は資産を持っていますが負債も抱えています。負債というのは、借金をはじめ、他への支払い義務です。

 資産から負債を引いた部分を純資産といい、これがその企業の純然たる資産といえます。

 純資産からわずかな項目を差し引いた部分を自己資本、さらに、わずかな項目を差し引いた部分を株主資本といいますが、通常は純資産≒自己資本≒株主資本と考えて差し支えありません。特に、純資産と自己資本はほとんど同じ意味で使われていますし、それで大きな問題はありません。

 

* 財務体質のごく簡単なチェック法ですが、 一般的には、自己資本比率が50%以上で有利子負債が純利益5年分程度までなら、安全性はかなり高いといえます。

 

自己資本比率自己資本(純資産) ÷ 資産

 

 

自己資本比率で財務の安定性を見る

 資産に対する自己資本の割合を自己資本比率といいます。負債が少なければ自己資本比率は高くなりますし、財務の安全性も高くなります。上場企業の平均はだいたい40%くらいであり、一般的には50%以上なら財務体質は良いと判断されます。

 30%台以下でも問題がないケ一スが多いのですが、自己資本比率が低ければ低いほど財務的な安定性は低くなり、金融危機などが起きた時にはピンチに陥りやすくなります。また、成長のために投資できる余地は低くなります。投資家としてはできるだけ自己資本比率が高い方が望ましいといえます。

 

 有利子負債は利子が発生する負債のことで、これがいわゆる借金です。これは、借入金や社債を合計した金額です。負債がゼロという上場企業は存在しませんが、有利子負債がゼロという企業は結構存在します。この有利子負債ゼロという状態を無借金経営と呼びます。一般的に純利益の10年分以内ならあまり問題ないといえますし、 5年分以内なら安全性はかなり高いといえます。

 

 

一般的な判断のメド(絶対的な判断基準ではない)

  • 50%以上:かなり安全
  • 40%:平均
  • 30%以上:あまり問題ないケ一スがほとんど
  • 30%以下:やや心配。貸借対照表などで資金繰りをチェック 

 

 

 

* 金融危機

 不況が極まって、金融機関の経営も揺らいで経済全体の資金の流れが上手く行かなくなり、資金繰りに行き詰まった企業の連鎖倒産(将棋倒しのような倒産)が次々起こるような事態。1997〜1998年のアジア通貨危機・日本の銀行危機、2008年のリーマンショックなどがその典型例です。

 

* 有利子負債

 負債(返済義務のあるお金)の種類の一つであり、利子が生じる負債のこと。具体的には借入金、社債などの合計金額。これがいわゆる借金です。