1株益の異常値の修正

 1株益(EPS)はPERを計算する大事なデータです。しかし、そのデータが実力からかい離して異常値になることがあります。こうした場合の対処法を考えます。

 

 

1株益の異常値に気づこう

 経常利益に対する純利益の比率は、だいたい0.6程度(60%程度)になるのが普通です。これは法定実効税率(法人の利益にかかる税率)が2016年現在は32%弱だからです(この税率は今後変更する可能性あり)。

 ただし、企業によっては連結決算の事情によって、経常利益→純利益の通常の比率が0.5程度(50%程度)とか0.7程度(70%程度)であることもあります。

 いずれにしても、経常利益→純利益の正常な比率というのが会社ごとにあります。 それに対して、「経常利益と純利益の比率が明らかにおかしい」というケ一スがあります。たとえば、最新年度の純利益が経常利益を上回った状態などです。

 純利益が実力から離れた異常値になる二大要因は、特別損益と赤字の繰り越しなどです。

 いずれにしても、純利益が異常値になると、1株益も実力より大きかったり小さかったりしてしまいます。その異常値の1株益で計算したPERで投資判断するのは危険です。本当は割安でない銘柄を割安と判断してしまう可能性があるからです。

 ですから、まずは、一株益に異常値がないかどうかを確認する必要があります。そのためには経常利益と純利益の比率を常に気にするようにしましょう。

 

修正1株益の求め方(簡易版)

  1. 経常利益→純利益の通常の比率を過去の業績の履歴から確認(わからない場合でも、連結決算があまり複雑でなさそうなら0.6で)
  2. 経常利益×①の比率=本来の純利益
  3. 本来の純利益+純利益×1株益=修正1株益

 

* 経常利益に対する純利益の比率は常に気にしましょう。その比率がおかしいと感じたらここで紹介する手順で1株益を修正します。より正確な1株益の修正の仕方はまた別の記事で説明します。

 

* 特別損益は、実際の収益力よりも一時的に取益をかさ上げしたり、少なくしたりしてしまいます。過去数年間の赤字の繰り越しがある場合には、その年の利益と相殺して課税対象を少なくできますので、経常利益に対する純利益の割合が通常よりも大きくなり、実力値よりもかさ上げされた数値になります。