目論見書の見方

 投資信託にはいくつものディスクロージャー(開示書類)がありますが、このうち目論見書は金融商品取引法に基づき、投資信託を購入する人たちへの交付が義務づけられている法定開示資料です。その投資信託の商品性などに関連する情報が詳細に記載されているので、購入する投資信託が決まったら、必す目を通すようにしましょう。

 

請求目輪見書と交付目綸見書

 投資信託の目論見書には、 「交付目論見書」と 「請求目論見書」という2種類があります。交付目論見書とは、投資信託を販売するに際して、あらかじめまたは同時に投資家に対して必ず交付しなければならない目論見書です。

 これに対して請求目論見書は、投資家からの請求があった場合に交付する目論見書です。

 つまり、販売金融機関の店頭で、投資信託を購入する意思表示をしたときに手渡される目論見書は、大半が交付目論見書になるはずです。そして、これは両者の違いにも関わることですが、個人投資家が目論見書をチェックするときは、両方に目を通す必要はありません。交付目論見書だけで十分です。というのも、請求目論見書は記述 内容が非常に難しく、かつ投資信託を購入するうえで別段、把握しておかなくてもよい情報も満載だからです。初めて投資信託を買う人たちは、読み解くこと自体に難航するでしょう。

 

 

交付目論見書とは

 では、交付目論見書にはどういうことが記載されているのでしょうか。
 交付目論見書は、大きく4つのパートで構成されています。
 第ー が 「ファンドの目的 ・特色」です。ここに目を通すと、その投資信託が何を組み入れて運用しているのか、投資方針はどういうものなのか、 ベ ンチマークは何なのか、銘柄選択のプロセスはどうなっているのか、投資制限はあるのか、といったことが分かります。自分が購入しようと考えている投資信託の特性を把握するための情報が盛り込まれています。

 第二が「投資リスク」です。ここは大事なので、必ず目を通すようにしてください。要は、購入する投資信託の基準価額変動要因などについてふれられています。また、「その他の留意点」として、どういう状況下で投資方針に沿った運用ができなくなるのか、とか、投資信託が組み入れている有価証券に生じるデフォルトリスクの有無などについて、詳細に記述されています。

 第三が「運用実績」です。これは、いっでも購入 ・解約ができる追加型投資信託で、かつ新規設定ではないものに限られますが、これまでどのような運用が行われてきたのかが、グラフや表を用いて丁寧に説明されています。新規骰定の投賣信託は過去の運用成績を持たないので、この項目自体が存在しません。

 ここでは、過去の基準価額と純資産総額の推移がグラフで表示されていたり組人比率上位の銘柄・業種別投資比率などが記載されていたりします。ここに目を通しておけば、過去の運用成績を把握できるのと共に、おおまかにではありますが.どういう銘柄に投資しているのか、といったことが分かります。

 また、過去の年間収益率が時系列でグラフ表示されています。毎年、どの程度のリターンが得られているのか、プラスのときとマイナスのときのいずれかが多いのか、なども一目で分かります。もちろん、年間収益率でマイナスの年が多いような投資信託は、購入を様子見したほうがよいでしょう。

 最後に「手続・手数料等」です。購入単位や購入代金の受渡、申込締切時間、解約制限といった、その投資信託を購入・解約する際に関わってくるさまざまな手続きに関連する項目や、購入手数料、信託報酬、信託財産留保額などの料率、および税金が表示されています。

 

 

請求目論見書とは

 交付目論見書に対して、請求目論見書の中身はかなり詳細に書かれています。文章の中には専門用語も多く含まれています。初めて投資信託を買う人には、なかなか理解が進まないことでしょう。

 また、交付目論見書はグラフや表なども多用されていますが、請求目論見書にはほとんど図版が用いられておらず、この点でも取っつきに<さを覚えます。

 請求目論見書の中身は、大きく3部構成になっています。投資信託の名称や受益証券の形態、発行額の総額、発行価格などが記載された「証券情報」、投資信託の投資方針や投資リスク、手数料や税金、運用状況、購入や解約の手続きなどが記載された「ファンド情報」、そして投資信託を運用する投資信託会社に関連した情報が記載された「委託会社等の情報」がそれです。

 個人が投資信託を購入する場合、請求目論見書まで必要かどうかという点ですが、基本的には交付目論見書のレベルで十分、投資信託を購入する際、事前に入手しておくべき情報を得ることはできます。むしろ請求目論見書まで読み込もうとすると、書かれている内容が難解なので、徒労に終わる恐れがあります。

 したがって、目論見書の読みこなしに関しては交付目論見書のレベルで十分です。交付目論見書も請求目論見書も、投資信託会社もしくは販売金融機関のウェプサイ卜から簡単にダウンロードできます。

 

 

*銘柄・業種別投資比率
 組入上位10銘柄、業種別投資比率の上位を示すデータのことです。どういう銘柄を組み入れて運用しているのかという点を見ることによって、投資信託の性格が把握できます。たとえば新興企業の株式が上位にきているようであれば、基準価額の値動きも大きくなる傾向がある、というようにです。