乖離率をチェックする

 乖離率とは、ETFの市場での取引価格と基準価額が、どの程度離れているのかを示す指標です。取引価格が基準価額を上回っている状態を「プレミアム」、下回っている状態を「ディスカウント」と言います。

 

 

乖離率が大きいことの意味

 乖離率は以下の計算式で簡単に算出できます。

  (終値 - 基準価額)÷ 基準価額

 基準価額は、未上場の投資信託も、ETFも同じで、受益権1口当たりの純資産総額です。言うなれば、ETFの正味価値と言ってもよいでしょう。 これに対して取引価格は、ETFの上場市場において、需給によって決められる価格です。したがって、取引価格が基準価額を上回っている場合は、そのETFが正味価値に対して割高に、取引価格が基準価額を下回っていれば、割安に評価されていることになります。そして、前者の場合の乖離率はプラスで表示され、これを「プレミアム」と言い、後者の場合だと乖離率はマイナスになり、「ディスカウント」と言います。

 したがって、マイナス値の大きなETFは、正味価値よりも割安になりますから、そのまま放っておくと、徐々にその差は埋まる方向に動きます。前述したように、基準価額に比べて取引価格が割安なETFは、指定参加者が市場でETFを買いつけ、組入資産を取り出してから、それを売却するという裁定取引が活発に行われるからです。 そのため、マイナス乖離の大きなETFは、いずれ正味価値に近い水準まで買われる可能性があると考えられます。

 それとは逆に、プラス乖離の大きなETFは、正味価値に対して割高に買われていることになりますから、指定参加者の裁定取引によって、いずれ正味価値に近い水準まで売られる可能性があります。

 したがって、プラス乖離の大きなETFを購入する場合は、正味価値まで売られる可能性があるのかどうかを見極める必要があります。 また、プラス乖離、マイナス乖離の両者についていえることですが、それが一時的なものなのか、それとも恒常的なものなのかを見ることも肝心です。もし恒常的に乖離率が大きい場合は、市場での流動性が低いETFであると考えられます。 ちなみに、乖離率が大きいものはʻʻ変わり種〟のETFに多く見られるようです。たとえば2017年12月11日時点の乖離率を見ると、南アフリカ株価指数を連動目標とする「NEXTFUNDS 南アフリカ株価指数」の乖離率は、▲17.33%にも達しています。逆にプラス乖離が大きいものとしては、「中国H株プル2倍上場投信」で、4%でした。

 

 

インディカティブNAVにも注目

 基準価額に対するデイスカウント、プレミアムを見るうえで、もうひとつ参考になる数値があります。「インディカティブNAV」がそれです。

 NAVとはNet Asset Valueの略で、「純資産総額」を意味します。通常の純資産総額は、その日の取引が終わった時点で算出されますが、インディカティブNAVは、取引時間中の1口当たり純資産総額を算出したものです。したがって、取引時間中における推定基準価額といってもよいでしょう。

 なぜ「推定」なのかということですが、インディカティブNAVの場合、ETFの取引価格のようにリアルタイムで常に変動するのではなく、15秒に1度の算出になるからです。現在、算出されたインディカティブNAVの前の数字は、15秒前に算出されたものであり、この間の15秒間の変動については反映されません。その意味で、推定基準価額ということになるのです。

 とはいえ、わずか15秒間のことですから、ほぼリアルタイムと考えてよいでしょう。いずれにしても、取引時間中における取引価格のディスカウント、プレミアムが把握しやすくなることで、ETFの取引の活性化が期待されています。 

 

*乖離率は、自分で計算することもできますが、現在のETFの上場本数を考えると、手作業で行うには手問暇がかかりすぎます。したがって、すでに算出されているものを利用するのが一番よいでしょう。ETFの乖離率はモーニングスターなどのサイトでチェッ クできます。またインディカテイブNAVは、日本取引所グループのホームページで見ることができます。