ETFの種類と調べ方

 連動するインデックスや価格によってETFを分類すると世界の株式や債券、コモディティなど、実に多岐にわたる資産クラスに投資できるだけの品揃えを有していることが分かります。ローコストで分散投資するには、適した商品と言えるでしょう。

 

 

さまざまな種類があるETF

 ETFは、連動目標となるインデックス指数によってさまざまな種類があります。ですから、ETFだけで十分に分散の効いたポートフォリオを組むことができます。

 2017年12月現在、国内の証券取引所に上場しているETFは230銘柄あります。中でも代表的なものとして挙げられるのが、日経平均株価TOPIXといった日本の株式市場全体の動きを捉えた株価指数に連動するETFです。 しかし、実際には、日本の株式だけでなく、外国株式、債券、不動産(REIT)、金や原油といったコモディティなど、さまざまな資産クラスを対象にしたETFが存在 します。

 日本の株式市場を対象にしたものに絞っても、「市場別」「規模別」「業種別」「テーマ別」など、それぞれに連動目標となるインデックス指数が異なる、多種多様なETFが設定されています。 市場別は東証1部市場の値動きを表している「日経225平均株価」、「東証株価指数 (TOPIX)」、東証マザーズ市場の値動きを表している「東証マザーズCore指数」、ジャスダック市場の値動きを表している「JASDAQ TOP20」などがあります。

 規模別は、時価総額流動性の高い順に、上位100銘柄を「大型株」、大型株を除く上位400銘柄を「中型株」、大型株と中型株を除いた全銘柄を「小型株」と定義されており、各規模別の株価動向を反映して動<ものです。

 業種別は「鉄鋼」、「自動車」、「金融」など、各業種別の株価動向に連動するETFです。そしてテーマ別ですが、これは「高配当」や「女性活用」、「ESG」など、株式市場で注目されているテーマに沿った株価インデックスを組成し、それに対して連動することを狙っています。

 日本の株式を対象にしたETFだけでも、その種類は多岐にわたっていますが、資産クラス別に見ると、さらにETFの投資範囲は広がります。

 外国株式は米国のS&P500、ラッセル2000、ダウ・ジョ一ンズ工業株30種平均などのメジャーどころをはじめとして、中国のCSI300、韓国のKOSPI200、インドのNifty50指数、タイのSET50指数、ロシアのRTS指数、全世界の先進国市場を対象にしたMSCIコクサイインデックス、世界の工マージング株式市場に分散投資する MSCIエマージング·マーケットIMIインデックス、世界のフロンティア株式市場に分散投資するMSCIフロンティア・マーケット100インデックスなど、これまた非常に幅広い選択肢があります。

 

*ESG
環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を合わせた言葉。ESGに配慮している企業を重視して行う投資をESG投資と言います。

 

 それ以外にも、債券のインデックス、国内外の不動産投資信託インデックス、金やプラチナ、原油などコモディテイの価格に連動するタイプ、日経225平均株価などの株価インデックスに対して2倍の変動率で動くレバレッジタイプ、株価インデックスとは逆の方向に動くインバースタイプ、そしてマーケットニュートラルなどの工ンハンストタイプなど、非常に多岐にわたった品揃えになっています。

 これらをすべて活用すれば、ETFによる国際分散投資ポートフォリオを簡単に構築することができます。

 

 

ETFの情報を調べるには

 ETFの情報を調べたいときに便利なのが、日本取引所グループのウェブサイトです。ここを見ると、国内の取引所に上場しているすべてのETFの銘柄を一覧で見ることができます。対象とするインデックス指数や信託報酬も一覧で見ることができるのでとても便利です。

 投資信託の評価会社であるモーニングスターのウェブサイトでは、その日の取引価格の終値出来高、基準価額についても一覧で見ることができます。インデックス指数からどのくらい乖離しているのかもひと目で分かるようになっています。

 また、独自で調査•発表しているレーティングについても星の数で表してありますので、参考にしてもよいでしょう。国内の取引所だけでなく、海外の取引所に上場している「海外ETF」についても調べることができるので、上級者にとっても活用価値の高いウェブサイトといえるでしょう。

 

 

組み合わせはできるだけシンプルに

 日本株式のインデックス、米国株式のインデックス、中国株式のインデックス、インド株式のインデックス、債券のインデックス、コモディティというように、ETFを 投資対象別に分けて投資すれば、とてもよ<分散されたポートフォリオが完成します。 しかし、個人がそれを実際に実行しようとすると、たとえば資産クラス別の投資比率をどのように考えればよいのか、運用開始から1年、あるいは2年が経過して、各 ETFの値上がり、値下がりが激しく、当初の投資比率が大き<変わったとき、リバラ ンスをどうすればよいのかなど、さまざまな問題が生じてきます。したがつて、国別、 資産クラス別で個別のETFを組み合わせるという投資手法は、かなり資産運用に慣れている人でないと、なかなかうまく行きません。 もし、資産運用の経験が浅い人が、ETFを用いてポートフォリオを組みたいので あれば、たとえば日本株式のインデックスに連動するETFに加え、MSCIコクサイのような、世界の先進国株式市場に分散投資したのと同じ投資効果を目指すインデックスに連動するETFを組み合わせる程度で十分です。それでも分散に対して不安なら ば、たとえば国内外の不動産投資信託のインデックスに連動するETFや、コモディティの価格に連動するETFあたりを少し組み合わせれば、十分に分散の効いたポートフォリオを持ったのと同じことになります。

 個人が長期的な資産形成のためにポートフォリオを組む場合には、できるだけ単純な仕組みにしておくことがポイントといえます。あまりにも多岐にわたった投資対象に分散投資するあまり、各資産の値動きが保有しているポートフォリオにどのような影響を及ぼすのかが分からなくなっては本末転倒だからです。くれぐれもマーケットが下落トレンドになったときのリスク要因が特定できないといったことにならないようにしたいものです。 なお、これだけ多数の種類があるETFではありますが、証券会社の店頭で「ETFの種類を教えてください」と聞いても、満足のいく回答が得られないでしょう。なぜなら、ETFは売買に掛かる手数料や信託報酬が低いため、販売金融機関としては儲けにつながらないというデメリットがあるからです。当然、それよりも高い手数料を稼げる投資信託はた<さんあるわけで、ETFを積極的に扱う意味がないというのが、証券会社の偽らざる気持ちといえるかもしれません。 そのため、店頭にいる販売スタッフ自身、ETFに対してほとんど知識を有していないケ一スがあります。ETFは、東京証券取引所に上場されている銘柄はすべて、どの証券会社でも売買できます。自分でしっかりと情報を集め、分析して売買できるようになることが必要です。