ETFの仕組み

 投資信託の中でも少し異なる存在感を放つのが「ETF」です。少しなじみにくい名前であるため、難しい金融商品なのではと思われがちですが、資産を増やしてい<うえでETFを選択肢に入れることにはとても大きなメリットがあります。

 

株式と同じように売買できる

 ETFは、Exchange Traded Fundの略で、「取引所で取引できる投資信託」のことを指しています。一般的には「上場投資信託」と称されており、市場で形成される取引価格は、特定のインデックスや価格に連動する傾向があります。 株式が株券を証券取引所に上場し、それを不特定多数の投資家が売り買いすることによって、株価が形成されるのと同じように、ETFは受益証券を証券取引所に上場し、それを不特定多数の投資家が自由に売り買いできます。株式の現物取引と同じと考えてよいでしょう。

 上場されていない、一般的な投資信託の場合、追加設定・解約する際の値段は、受益権1口当たりの純資産総額である「基準価額」に基づいて決まります.そして基準価額は、投資信託に組み入れられている資産が取引されているマーケットの大引けの値段によって計算されます。したがつて、1日のうち1回しか基準価額は算出されません。 これに対してETFは、上場されていない投資信託と同様、1日に1回、基準価額が算出されていますが、それと同時に、「取引価格」が存在します。取引価格は、ETFが上場されている市場において形成されている価格です。株式でいう株価と同じです。ETFの取引価格は、純資産総額の増減とは全く関係なく、単純に市場参加者の需給バランスによって決まります。買い手が多ければ取引価格は値上がりしますし、逆に売手が多ければ取引価格は値下がりします。個人投資家ETFを取引するときは、この取引価格で売貿します。

 

 

日本銀行ETFの買い入れを行っている

 ETFは近年、急激に市場における存在感を増してきています。それは私たち個人投資家だけではありません。年金基金ヘッジファンドなどの機関投資家も積極的にETFを組み入れて運用を行うようになっています。 それだけではありません。2010年11月5日に「資産買入等の基金の運営として行う指数連動型上場投資信託受益権等買入等基本要領(2013年4月4日廃止)」が制定されたのを受け、2010年12月からは日本銀行によるETFの買い入れが行われるようになりました。

 日本銀行ETFの買い入れを行う目的はどこにあるのでしょうか。
 それは、ETFを買い入れることによって資金を市場に提供し、経済を活性化するためです。いわゆる金融緩和の一環としての「公開市場操」です。

 いつ、どのETFの買い入れを行うのかは、金融政策決定会合で決められます。 2018年1月現在、日本銀行は1年当たり約6兆円のペースでETFの買い入れを続けています。

 

公開市場操作

 金融市場において、日本銀行中央銀行)が金融商品を売買することによって、市場における資金(マネタリーベ一ス)の量を操作し、マネーサプライや金利を調整すること。貫い入れを行って市場に資金を提供することを買いオペレーシヨン(買いオペ)、売却することで市場から資金を吸収することを売りオペレーシヨン(売りオペ)と呼びます。

 

機関投資家は「設定」によってETFを売買している

 市場で売買するのではなく、機関投資家は「設定」という方法でETFを売買しています。これは、ETFの連動目標としているインデックスと同じ現物株式ポートフォリオと、ETFの受益証券を交換することで、ETFを手にする方法です。ただし、この方法でETFを入手するためには、たとえば日経225平均株価に連動するタイプのETFだと、225銘柄をすべて保有していなければ、ETFの受益証券と交換できません。個人投資家で、225銘柄のポートフォリオを持っている人はほとんどいないので、設定によってETFを購入できるのは機関投資家のみになります。 では、なぜ機関投資家は、設定によってETFを購入するのでしょうか。それは、自分が持っているポートフォリオの管理が楽になるからです。日経225平均株価に連動するポートフォリオを持っためには、日経225平均株価を構成している225銘柄を現物で保有すればよいのですが、1銘柄ずつ買って揃えるには手間が掛かりますし、1銘柄ずつ売買するとコストが割高になります。

 その点、日経 225平均株価に連動するET F を持っておけば、現物株式を225銘柄買い付けていつけてポートフォリオを組むよりも、管理する手間が軽くなるだけでなく、コストも割安になります。

 そのため、機関投資家は基本的に設定によって、保有している個別株式のポー トフォリオを、ETFと交換するケ一スが多く、それを頻繁に行っているETFは、純資産総額の規模も大きくなるのです。

 

 

ローコストであることがETFのメリット

 ETFには、一般の投資信託に比べてコストが安いというメリットがあります。どのくらい低いのか、ということですが、信託報酬率が年 0.06%〜0.95% です。最も多いのは 0.2%〜0.5%程度でしょう。アクテイプ型投資信託の中には、年2%の信託報酬を取るものもあるので、それと比べれば格段にコストが安いことになります。

 また、購入時に掛かるコストですが、通常の投資信託の場合販売手数料が掛かります。最近はノーロードと呼ばれる販売手数料が無料の商品も増えてきていますが、高いものでは購入金額に対して 2%程度が掛かるものもあります。ー方、ETFは上場商品なので、購入時のコストは株式の売買委託手数料と同じものが適用されます。とはいえ、株式の売買委託手数料は現在、インターネット証券会社を中心にかなり低率になっているので、少なくとも 2%程度の購入手数料が掛かる商品に比べれば、安くなるはずです。

 ちなみに、あるインターネット証券会社の売買委託手数料は、約定金額で50万円までが 272円です。売買委託手数料は、買うときだけでなく、売るときも掛かってきますので、往復で 544 円。約定金額が50万円だとしたら、料率は0.1%です。買いと売りの両方でも、こうした投資信託の購入手数料よりもはるかに安くなります。このローコストが、ETFの一番のメリットといえるでしょう。

 

 

一般の投資信託ETFの違い

 一般の投資信託ETFとの違いは、こうしたコストの面だけではありません。ETFは、証券取引所に上場している投資信託です。ですから、銀行では購入することができません。証券会社に証券口座を開設し、株式と同様に売買注文を出します。取引の仕方も通常の株式と同様ですので、リアルタイムで売買ができます。指値注文や信用取引を行うことも可能です。NISA口座やつみたてNISA口座でも購入できます。
 ETFは銘柄ごとに売買単位(口数)が決められています。したがって、1口当たりの市場価格と売買単位をかけ合わせたものが最低購入金額となります。その多くが1万~数万円程度から購入できます。
 ただし、先ほども述べたように、ETFは売買するたびに売買委託手数料が掛かります。ですから、少ない金額で頻繁に売買をするほど、コストを上回るだけの利益をえるのが難しくなってしまいます。投資初心者であれば、信託報酬が安いというメリットを活かし、長期保有をすることで大きな利益を狙うのがおすすめです。