投資信託の指標:ベンチマーク

 運用者が追求するリターンは、ベンチマークを設定し、それに対して自分の運用成績が上回ったかどうかを見る「相対リターン」と、マーケットの上げ下げに関係なく常にリターンを追求する「絶対リターン」があります。

 

ベンチマークとは

 ベンチマークとは「目標指数」などと訳されます。相対リターンを目指す投資信託は必ず何をベンチマークにしているのかを公表しています。例えば、日本株式を組み入れて運用する投資信託であれば、日経平均株価TOPIXベンチマークになりますし、世界の先進国株式に投資するのであればMSCIコクサイがベンチマークになるでしょう。その他、債券にもインデックスが作成・公表されており、投資信託の投資対象に応じてそれにあったベンチマークを設定しています。

 相対リターンとは、このベンチマークを常に上回るようなリターンを指します。例えば、日本株式を組み入れて運用する投資信託で、日経平均株価ベンチマークにしている場合、一定期間中に日経平均株価が10%上昇したら、基準価格の上昇がそれを1%でも上回るようなリターンを目指します。逆に日経平均株価が10%下落した場合は、基準価格の下落率がそれを1%でも小さく抑えられるようにします。このように、常にベンチマークを上回るように運用するのが、相対リターンを追求する投資信託で、大半の投資信託はこのタイプです。

 これに対して絶対リターンは、投資先のマーケットが上がっていようといまいと、常にリターンが上がることです。例えば、マーケットニュートラル戦略をとる投資信託がこれに当たります。したがって、絶対リターンを目指す投資信託には、そもそもベンチマークはありません。

 株価は2つのファクターで形成されます。一つは企業の業績、将来性であり、もう一つはマーケット全体の値動きです。例えば、業績も財務体制も、将来性も素晴らしい企業なのに、株式市場が暴落したために、株価がその値動きに引きずられて値下がりするケースは頻繁に起こります。マーケットニュートラル戦略は、株価を形成しているこれらの2つのファクターのうち、マーケット全体の値動きから受ける影響を取り除くようなポートフォリオを組みます。具体的には、優良企業の株式を買うのと同時に、株価指数先物を売るのです。これを計算式で表現すると以下のようになります。

 

 業績など企業の将来性を評価して値上がりする分・・・A

 マーケット全体の値動きから影響を受ける部分・・・B

 (A+B)-B=A

 

 前述したように、株価形成はAとBを組み合わせたものになりますので、株価指数先物を売れば、Bの部分が相殺される形になり、組み入れ銘柄からマーケット全体の値動きによって影響される部分を取り除くことができ、結果的に個別企業の財務内容や業績、将来性への評価によって値上がりする部分だけを抽出できるのです。

 

 

ベンチマーク評価は運用報告書をチェックする

 絶対リターンを目指している投資信託に関しては、決算ごとにきちんとリターンを積み重ねているかどうかを見ることによって、「看板に偽り無し」かどうかわかります。マイナスが続いていたり、プラスとマイナスを繰り返しているようでは、絶対リターンとは言えません。

 これに対して、相対リターンの投資信託の場合は、運用報告書を見れば、きちんとベンチマークを上回るリターンを実現できているのかどうかがわかります。運用報告書の冒頭のページには「最近5期の運用実績」という表が掲載されていますので、これを参考にします。直近5期分の数字しかないので、長期の運用成績を判断するにはやや材料不足ですが、多くの投資信託会社のホームページには、複数期の運用報告書がアーカイブされているので、それを遡ってチェックすれば、過去7期分くらいまでは把握できるはずです。見方は、基準価格の期中騰落率と、ベンチマークの期中騰落率を比較するだけです。ちなみに、基準価格の期中騰落率は、この間に分配金が出ている場合、分配金も込みにした上での騰落率になっています。