投資信託の指標:売買高比率

 投資信託は長期保有を原則としますが、投資信託を運用しているファンドマネージャーが短期売買を繰り返していたらどうなるでしょうか。売買高比率は投資信託に組み入れられている資産が、どの程度の頻度で売買されているのかを示す指標で、これを見れば投資信託の運用スタンスがわかります。

 

 

運用報告書をチェック

 投資信託の開示資料(ディスクロージャー)の一つに「運用報告書」があります。詳しくは別記しますが、運用報告書は投資信託が決算を迎えた時、その期の運用状況を総括し、投資信託保有者に知らせるために作成されている開示資料です。つまり、運用報告書には、前回の決算から今回の決算まで、どのような運用が行われてきたのか、それによってリターンはどうなったのか、売買手数料などのコストはどうだったのか、ということが詳細に記載されています。ここに、「売買高比率」も掲載されています。

 

売買高比率とは、その投資信託に組み入れられている有価証券の売買頻度を示すデータです。この数字が高いほど、組み入れ有価証券の売買が頻繁に行われたということです。

 

 計算式は

  売買高比率=期中の株式売買金額÷期中の平均組入株式時価総額

 です。

 

 「期中」というのは、前回の決算日の翌営業日から今回の決算日までのことです。投資信託は年1回、もしくは複数回の決算日を設けており、その時点で運用収益が発生していたら、その一部を「分配金」として、投資信託保有者に支払います。

 次に、「株式売買金額」ですが、これは売買した株式の額のことです。例えばトヨタ自動車の株式を1億円売却し、ソフトバンクの株式を1億円分買った場合、売り1億円都会1億円の合計2億が株式売買金額になります。投資信託は、前回の決算日翌日から今回の決算日まで、幾度となく組み入れ銘柄の入れ替え、新規買付、売却を繰り返しており、それを金額ベースで合計したものが、株式売買金額になります。

 「平均組入株式時価総額」は、投資信託に組み入れられている株式の時価総額の平均値です。純資産総額は資産の流出入、組入資産の値上がり・値下がりによって変動しますから、その平均値を計算したものになります。

 

 もう一度、計算式に戻りましょう。期中の組入株式の平均時価総額が200億円で、同じ期中の株式の売買金額が400億円だとしたら、売買高比率は2.0になります。売買高比率2.0というのは投資信託に組み入れられている株式を全て売却し、その売却機代金で買い付けたのと同じことです。つまり、組み入れ銘柄をそっくり入れ替えるような売買を行ったのが、売買高比率2.0の意味です。

 

 

売買高比率が高いとコストが上がる

 アクティブ運用の投資信託は、総じて売買高比率が高めになりがちです。逆に、日経平均株価などの株価インデックスに連動した運用成績を目指すパッシブ運用の場合、売買高比率は一般的に低めになります。

 確かに、少しでも高いリターンを目指し、銘柄を乗り換えていく手法もありますが、それらは個人のデイトレーダーや証券会社の自己売買部門に属している株式ディーラーの手法です。投資信託ファンドマネージャーはそういった売買はせず、ファンダメンタルズを分析し、長期に成長する企業に長期投資をするのが基本的なスタイルです。