為替ヘッジについて理解する

 海外の株式や債券を組み入れて運用する投資信託は、為替レートが円高に進んだとき、為替差損を被るリスクがあります。為替リスクを最小限に抑えるためには、為替ヘッジが行われている投資信託を選ぶという手もあります。

 

 

 為替ヘッジの基本的な仕組み

 海外の株式や債券は、基本的に外貨建て位の資産です。例えば、米国の株式であれば、米ドル建ですし、ドイツの株式であればユーロ建てです。日本で設定・運用されている投資信託で、この手の海外の資産を組み入れているタイプは、円で受益者からの資金を受け取る一方、投資信託を通じて海外資産を組み入れる際には、集めた円を投資先の組みの通貨に交換して投資します。

 この流れの中で、為替取引が行われます。集めた円を外貨に替える、解約によって受け取った外貨を円に替える、という取引は、外国為替取引であり、そこには常に為替リスクが付きまといます。

 為替リスクとは、外貨を保有している状態で円高が進み、円建てにももどした時の資産総額が購入時点の資産総額に比べて目減りすることを意味しています。そこで投資信託の中には、事前位為替リスクをヘッジしているものがあります。為替リスクをヘッジするとは、どういうことなのか、解説していきます。

 例えば、1ドル110円の時、米ドル建の資産を100万ドル分解入れたとします。金額にして1億1000万円です。もちろん、この取引を行った人は、米ドルはここから先、さらにもう1段階上昇するという見方を持っています。

 とはいえ、為替の先行きはわからないで、為替ヘッジをしようというのが、本来の狙いです。

 上記のケースで仮に一ドル九十九円まで円高が進んだとしましょう。この場合、何もせずにそのままポジションを持ち続けていたら、1億1000万円が9900万円まで目減りしてしまいます。それはできれば避けたい時に注目されるのが、為替の先物予約です。

 具体的には、1ドル110円の時に100万ドル分を購入しているので、このままだと確実に大損を被ります。そこで例えば、1ヶ月後に1ドル110円で100万ドルを売却するという約束を、第3者と締結します。そうすることによって例えば1ヶ月後の為替レートが90円になったとしても、1ドル110円で100万ドル分を売却できるのです。

 

 

多くの投資信託は為替ヘッジをしない

 投資信託の為替ヘッジは、3つのタイプに分かれます。

 第一に、ヘッジをしないタイプ。これは為替レートの動きがストレートに運用成績に反映されます。円高になれば基準価格を押し上げ、円高になれば基準価格を押し下げます。為替の値動きによって収益はブレますが、今、運用されている、海外資産を組み入れて運用する投資信託の多くが、為替ヘッジをしないというタイプです。

 第二は、ヘッジ愛とヘッジなしを選択できるタイプです。選択型投資信託と同じで、一つの投資信託にヘッジありとヘッジなしの2つのコースが用意されており、投資信託保有者がいずれかを自由に選択できます。円安局面ではヘッジなしで為替差益を獲りにいき、円高になりそうな時はヘッジありで為替差損を軽減させるという使い方が可能です。

 第三は、ヘッジ付きのタイプ。これはヘッジなしのタイプとは逆に、為替レートの動きがあまり影響しないタイプです。円高によって基準価格が下落するリスクを最小限に抑える一方で、円安が進んでも、為替差益が運用成績に反映されにくく、為替差益による高いリターンは望めません。

 以上の3タイプから、自分で好きなものを選べば良いのですが、注意点があります。第二のタイプである選択型ですが、為替レートが今後どの方向に行くのかを判断することはたやすくありません。為替レートの方向性に応じてヘッジありとヘッジなしを自由に選択できるのは利便性が高いように思得るのですが、それを有効に活用できる人はあまりいないと思われます。したがって第二のタイプは、為替ヘッジの有無を選択できること自体、メリットとは言えませんので、この点を円卓の理由にする必要はありません。

 次に、為替ヘッジありのタイプですが、為替リスクの影響が全くないというわけではないという点に、注意が必要です。確かに為替ヘッジなしのタイプと比べると、基準価格が為替レートの値動きから受ける影響は小さいのですが、100%為替リスクをヘッジできるわけではないのです。追加設定も中途解約もできないようにして、集まった資金の全額に対して、償還期日に合わせた為替予約を取らない限り、100%のヘッジは不可能です。例えば、現在の純資産総額が米ドル建で1000万米ドルだとすると、この1000万米ドルに対して将来の米ドル売り予約を行えば、100%のヘッジは可能になりますが、追加型投資信託は日々、資金の流出入がありますし、組み入れ資産の評価額も変わります。それに合わせてできるだけヘッジできるように調整はしますが、現実問題として、売り予約を行う金額と、純資産オス学の間には乖離が生じます。この分だけ、100%ヘッジはできないということです。したがって、為替ヘッジありの投資信託でも、その基準価格は多少なりとも為替変動の影響を受けるのです。

 

 では、為替ヘッジをしない投資信託はどうか、ということですが、確かに円高が進めば、円ベースの基準価格を押し下げる力が働きます。しかし、それは短期的な為替レートの値動きについてであって、長期的に見ると、また違った事実が見えてきます。

 あくまでも米ドル/円の話ですが、長期的にその値動きを見ると、一定のレンジで推移しているという事実です。例えば、1990年から2017年までの27年間の推移を見ると、大雑把に捉えれば、1ドル75円から160円のレンジで推移しているのです。レンジ幅はかなり広めですが、今後も一定のレンジの中で推移していくと考えられます。つまり、長期で投資信託保有すれば、短期的には為替レートの変動で基準価格がブレますが、長期的に見ればレンジの中で推移するため、為替が基準価格に及ぼす影響は中立と言えます。さらに、為替ヘッジにはコストがかかりますが、為替ヘッジを行わなければ、そのコストもかかりません。為替ヘッジなしの投資信託が多いのはこういう理由があるからなのです。

 

 

*為替ヘッジを行う場合、将来売る通貨の金利が、買い戻す通貨の金利に比べて高い場合、その分がヘッジコストになります。例えば、米国の政策金利であるFFレートが1.5%、日本の政策金利が0%の場合、一定期間後に米ドルを売って円を買い戻す為替予約を行うと、年率で1.5%のヘッジコストがかかります。