コストの内訳を理解する

 コストは、投資信託を選ぶ上で重要な選択基準であり、購入手数料と信託報酬が2大コストといっても良いでしょう。そちらも、できれば低いことに越したことはないですが、中でも信託報酬は投資信託保有している間、純資産から日々惹かれるものなので、なるべく低いものを選ぶようにしましょう。

 

 

購入手数料は保有期間で案文できる

 投資信託を購入する時、購入者は販売金融機関に対して「購入手数料」というコストを支払います。このコストの名目は、投資信託を販売するにあたって販売金融機関の営業担当者がセールスにかけた手間賃です。料率は投資信託によって異なりますが、例えば追加型投資信託だと、購入金額に対して2%程度が購入手数料になります。つまり、100万円分購入したら、2万円が購入手数料として差し引かれ、98万円が正味の購入金額になります(消費税分は加味していません)。

 「投資信託は長期保有すべき」と言われる理由の一つは、この購入手数料にあります。株式の短期売買と同じ感覚で、投資信託の購入・解約を何度も繰り返したらどうなるでしょうか。基本的に投資信託の大半は、購入手数料はかかるものの、解約時の手数料はありません。「信託財産保留額」を手数料と勘違いされる方もいますが、厳密には違います。基本的に購入時にしか手数料がかからないとはいえ、株式の委託手数料に比べて、投資信託の購入手数料は割高です。仮に2%として、これを年間に10回、購入・解約を繰り返したら、それだけで合計の手数料は20%にもなります。乗り換えた投資信託が全て優秀な運用をしているのだとしても、コストだけで年間20%も取られたら、資産は増えません。したがって、「投資信託は長期で投資すべき」と言われるのです。

 長期保有のメリットはもう一つあります。それは、保有期間で購入手数料の料率を案文できることです。例えば購入手数料の両立が2%の投資信託を1年保有して解約するのと、10年保有して解約するのでは、年間のコスト負担率で考えたとき、当然ですが、10年保有した方が割安になります。これは簡単な割り算でよく、購入手数料が2%で、保有期間が1年間の場合、年間の購入手数料の負担率は2%ですが、もし10年間保有したら、0.2%になります。

 なお、最近の購入手数料の傾向としては、インターネット証券会社を中心にして、購入手数料を取らないケースが増えています。

 

 

*信託財産留保額

投資信託を解約すると、組み入れ資産を売却して解約資金を作ります。組み入れ資産を売却するには、委託手数料などのコストがかかります。投資信託の組み入れ資産を売却するのにかかるコストは、信託財産から支弁する決まりがあるので、解約による売却にかかるコストは、自分の都合で解約する受益者ではなく、現時点でその投資信託保有している受益者が負担する形になります。その不公平感をなくすために設けられているのが信託財産保留額です。つまり、解約する受益者から信託財産保留額を徴収し、それを信託財産に戻すことによって、組み入れ資産の売却にかかったコストの支払いに回すのです。この流れからもわかるように、信託財産保留額は投資信託会社、販売金融機関いずれの収益でもないため、手数料ではないのです。

 

日々徴収される信託報酬

 投資信託のコストは購入手数料だけではありません。購入手数料は文字通り、投資信託を購入する時にだけかかるコストですが、投資信託保有する間、徴収され続けるコストが、信託報酬です。

 信託報酬は、投資信託保有している期間中、日々、信託財産から自動的に差し引かれます。信託報酬の料率は年率で表示されており、その365分の1ずつ、日割りでかかってくるのです。例えば年率が2%だとしたら、その365分の1で日々0.005%ずつが、信託財産から差し引かれます。このように、保有期間中、常時差し引かれるコストですから、購入手数料のように保有期間を長期にするほど1年あたりのコストが割安になるものでもありません。

 信託報酬は、投資信託を運用する投資信託会社、投資信託の資産を管理している受託銀行、そして償還金や分配金の受渡業務を行う販売金融機関の三者に対する手間賃という名目で徴収されています。具体的な配分ですが、受託銀行の信託報酬率が最も低く、年率0.1%というケースが多いようです。仮に、年間の信託報酬率が2%の場合、ここから受託銀行の信託報酬を差し引いた残り1.9%を投資信託会社と販売金融機関で分けます。

 また、信託報酬の料率はアクティブ運用に比べてインデックス運用の方が割安です。