純資産総額の水準、資金純増額で選ぶ

 投資信託の純資産総額とは、投資信託に組み入れられている資産を時価評価したものです。この額が大きいほど、繰上償還のリスクは少なく、かつ、資金純増が続いている投資信託は、運用が安定する傾向があります。

 

 

純資産総額と運用期間を合わせてスクリーニングする

 運用期間を用いたスクリーニングと同様に、SMA口座専用の投資信託や、確定拠出年金投資信託を除いた約4600本の投資信託を対象にして、純資産総額の規模を調べてみると、大半の投資信託は、純資産総額の規模が非常に小さいのです。

 

 具体的な数字をあげてみると、

  • 1兆円以上・・・3本
  • 1兆円未満、1000億円以上・・・99本
  • 1000億円未満500億円以上・・・111本
  • 500億円未満100億円以上・・・618本
  • 100億円未満50億円以上・・・520本
  • 50億円未満30億円以上・・・450本
  • 30億円未満10億円以上・・・996本
  • 10億円未満・・・1846本

 

 純資産総額は最低いくら以上必要なのか、イオいろな見方がありあますが、一つは30億円以上が目安にはなります。これは株式型投資信託を運用する際にかかるコストを、信託報酬で賄うことができるギリギリのラインと言われている数字です。ただ、30億円ぴったりでは、あまりにも余裕がありあません。できれば100億円以上は欲しいところです。これを満たす投資信託は800本程度で、これで選択肢はかなり絞れてきました。

 より良い投資信託を選ぶ一つの基準として、「10年以上の運用成績を持っていて、かつ、純資産総額が100億円以上」ということが言えるでしょう。

 

 

資金の流出入をチェックする

 純資産総額100億円以上、運用期間10年以上の投資信託から購入対象を選ぶんだら、もう一手間かけてみましょう。資金の流出入のチェックです。

 例えば、純資産総額が100億円を超えてる投資信託があったとしても、その純資産総額が、短期間のうちに大きく減少している場合は要注意です。なぜなら解約による資金流出が生じている恐れがあるからです。

 投資信託の純資産総額が、組み入れ資産の時価総額であることは前述した通りです。では、純資産総額が減少するのは、どういう状況なのでしょうか。大きく2つの要因が考えられます。

 第一に、組み入れ資産が値下がりした場合です。この場合、組み入れ資産の時価評価額が減少しますから、それに伴って純資産総額も減少します。

 第二は、解約によって受益権口数が減少した場合です。この場合、投資信託から資産が流出するため、純資産総額が減少します。

 この2つの要因の掛け合わせによって、純資産総額は増減します。したがって、組入資産が値上がりしたとしても、解約が多ければ純資産総額が減少することもありますし、逆に組入資産が値下がりしたとしても、買い付けによって資金が流入していれば、純資産総額は増加することもあります。

 つまり、純資産総額の増減を見ているだけでは、資金の流出入がわからないということです。

 仮に純資産総額が一定水準でほとんど変わらなくても、資金の流出入を見ると実は資金流出が続いている投資信託がありますが、これは決して良い状況ではありません。解約が生じるとファンドマネージャーは解約資金を作るために、ひたすら組入資産を売却せざるを得なくなります。ましてや、解約がどんどん増えて、資金流出が続くと組入資産を売却するだけでなく、将来の運用成績を支える有望な投資対象を組み入れたくても、それが一切できなくなります。結果、運用成績はジリ貧をたどります。投資信託の運用にとって、資金流出は致命的なのです。

 したがって、純資産総額だけでなく、資金の流出入を把握しておく必要がありますが、実は自分で簡単にできます。

 投資信託の基準価格は、受益権1口当たりの純資産総額だと先に説明しました。つまり、純資産総額を基準価格で割ると、受益権口数が計算できます。この受益権口数が時系列で減少している場合、解約によって資金が流出していると考えられます。

 これは、エクセルなどの表計算ソフトを使えば、簡単に求められます。基準価格と純資産総額の時系列データは、ヤフーファイナンスから引っ張ることができます。

 自分で計算するのが面倒という場合は、モーニングスターのサイトを活用します。「ファンドを探す」という検索窓があるので、ここに自分が購入を検討しているファンド名を入れます。希望するファン風土が検索できたら、その詳細ページの中から、「リターン」というタブをクリックし、さらに「月次資金流出入額」というタブをクリックすると過去5年分の資金流出入額がグラフで見られます。実際に購入する際には、できるだけ長い期間、資金流入が続いているものにすることが肝要です。