選択型投資信託

 投資信託の中には、特定の業種、テーマに合わせた銘柄のみでポートフォリオを構築し、運用する投資信託があります。普通の投資信託は、運用者側で決めた運用方針に「おまかせ」する部分が大きいのですが、選択型投資信託の場合は購入する側が自分の考えで選ぶ必要があります。

 

様々なタイプがある選択型

 たとえば「業種選択型投資信託」は、投資信託A(鉄鋼)、投資信託B(造船)、投資信託C(運送用機器)、投資信託D(電機)、投資信託E(サービス)というように、各セクターに集中投資する複数の投資信託がワンセットになっています。購入者はこれらのセクターのうち、自分でこれから有望と思われるセクターの投資信託を購入したり、あるいは複数のセクターの投資信託を組み合わせたりして購入します。自分で業種を選ぶという点で、購入者が自分で選ぶという手間は省けますが、個別銘柄に投資するのに近い感覚で利用できるのが特徴です。

 選択型投資信託は業種別だけではなく、他にもいくつかのタイプがあります。例えばテーマ別選択型投資信託もあります。「環境関連」、「IT関連」、「ゲノム関連」というように、特定のテーマに関連した企業の株式でポートフォリオを構築する複数の投資信託で構成されている投資信託です。また、地域選択型投資信託は、「米国株式」、「欧州株式」、「中国株式」、「インド株式」というように、国や地域別で構築されています。

 

 これらの選択型投資信託の特徴は、前述したように個別銘柄投資に近い感覚で利用できるため、もっと積極的に自分で判断して資産運用したいという人に向いてるわけですが、それと同時に、投資信託を乗り換える際にかかるコストが割安というメリットもあります。

 購入する際には、購入金額に対して2%程度という、一般的な手数料がかかりますが、例えば投資信託AからBに乗り換える際は、投資信託Bの購入手数料は基本的にはかからないか、もしくは購入手数料に比べて割安な乗り換え手数料で済みます。この点からも、一つの投資信託を長期保有するよりも、その時のマーケットの動向に応じて、保管投資信託に乗り換えていくという性質が強いと言えます。

 また、どの選択型投資信託にも、構成されている投資信託群の中に「マネー」あるいは「マネープール」と称する投資信託があります。これは、例えば投資信託Aを解約した後、、特に投資したい業種やテーマがない場合、あるいは相場の先行きが不透明になっているため、一時的に現金にしておきたい場合に購入する投資信託です。「マネー」という名称がついていることからも分かるように、この投資信託は株式を一切組み入れずに運用する公社債投資信託と、ほぼ同じ商品性を持っています。当然、元本割れのリスクは極めて低く、預貯金に預けておくのと同じ感覚で利用できます。一旦、現金に引き出して預貯金に預けておくという手もありますが、選択型投資信託の場合、資金を一度外に出すと、再び購入する際には当初の購入手数料がかかります。しかし、マネーファンドに置いておけば、他の投資信託を購入する際、購入手数料がかからないか、もしくは割安な手数料で済みます。

 ただ、最近は選択型以外でも特定のテーマ、業種、国・地域に絞って投資するタイプの投資信託が増えてきました。結果、選択型投資信託の中には召喚されているものが多く、現在でも運用が継続されている選択型投資信託は本数自体がかなり減っています。

 

 

通貨を選ぶ通貨選択型

 2008年あたりから急増し、人気を集めた投資信託に「通貨選択型投資信託」があります。

 日本国内で設定・運用されている投資信託は、基本的に購入者が投資信託を買うのに支払う通貨は円であり、もし海外市場に投資する必要がある場合は、購入者から集めた円を、投資信託会社が現地通貨に替えた上で投資します。

 これに対して通貨選択型投資信託は、投資先に投資する際の通貨を事前に選択できるタイプの投資信託です。例えば、ブラジル・レアルコースを選択した場合、購入者は円でこれを買うことになりますが、投資先通貨が米ドルの場合は、ブラジル・レアルを米ドルに変えた上で投資する形になります。つまり、「円→ブラジル・レアル→米ドル」というように、2回の為替取引を介して、投資先の資産を組み入れるのです。

 

 なぜわざわざこんなことをするのか?

 実はこれが通貨選択型た投資信託のポイントです。

 

 ブラジル・レアルコースを選択したとしましょう。投資先の投資信託に組み入れられれいるのは米ドル建のハイ・イールド債券です。ハイ・イールド債券とは、高金利社債のことです。この時、行われる為替取引は、ブラジル・レアル売りの米ドル買いです。この取引を行うのと同時に、通貨先物取引によって米ドル売りのブラジル・レアル買いという為替ヘッジが行われます。低金利通貨で高金利通貨のヘッジを行うと、為替ヘッジプレミアムという収益が発生します。この事例では、金利が低い米ドルを売って、金利が高いブラジル・レアルを買うという為替ヘッジを行うため、為替ヘッジプレミアムが発生するのです。これが通貨選択型投資信託の分配金利回りを押し上げる効果につながります。この分配金利回りが高くなることことで、通貨選択型投資信託は個人の人気を集めたのです。

 

 ただし、良いことばかりではありません。当然のことですが、高い分配金利回りに裏には、リスクもあります。

 例えば高金利通貨の流動性問題です。ブラジル・レアルコースを購入する場合、購入者は円で投資しますから、ここで一旦、円をブラジル・レアルに帰る為替取引が行われます。ただ、ブラジル・レアルのような高金利通貨は、為替市場での流動性が非常に低いため、マーケットが混乱した場合など、為替レートが大きくブレるケースがあります。つまり、高い為替リスクを覚悟しなければなりません。

 また、最終的な投資先のリスクも想定しておく必要があるでしょう。事例にもあげられましたが、投資先はハイ・イールド債などの高金利債券です。高金利債券には金利が高い理由があります。例えば元利金の支払いが滞るデフォルトリスクもありますし、債券価格の値動きが激しいケースもあります。

 通貨選択型投資信託は、投資先ならびに通貨という2つの面で、比較的高いリスクがあることを忘れないようにする必要があります。