コモディティ型投資信託

 コモディティとは、「商品」のことです。金や銀、プラチナなどの貴金属、アルミニウムやゴムなどの工業品、そしてオレンジジュースやトウモロコシなどの食糧品といったものがあり、先物市場で日々、取引されています。こうした商品先物取引のインデックスに投資するのがコモディティ投資信託です。

 

 

インフレに強い特性を持つ

 一般的に、コモディティはインフレに強いと言われています。インフレとは物の値段が上がることです。コモディティは、そもそもモノなので、インフレが昂進すれば、コモディティの価格も上昇傾向をたどります。したがって、コモディティは、インフレリスクをヘッジするための投資対象として有効であると考えられています。

 コモディティへの投資は、個人には少々馴染まないところがあります。現状、コモディティへの直接投資は、商品先物市場を通じて行われ、日本でも商品先物会社を通じて、商品先物取引に参加することは可能ですが、根本的にリスクが高いのです。

 商品先物取引に参加するためには、商品先会社に口座を開くのと同時に、委託証拠金を集める必要があります。委託証拠金とは、先物取引を行なう際に必要な手付金のようなものです。商品先物取引は、この委託証拠金に対して、何倍、何十倍というレバレッジをかけて売買する仕組みなので、非常にリスクが高いのです。

 例えば、金先物取引の必要証拠金は、70000円程度ですが、これで1キログラムの金を売買できます。金価格は1グラム当たり5000円前後なので、1キログラムは500万円であり、レバレッジは70倍を優に超えます。もちろん、商品先物会社によっては自主的に委託証拠金を高めに設定して、レバレッジを40倍程度まで下げているところもありますが、それでも非常に高いレバレッジであり、損失が膨らむと証拠金の追加を求められます。

 また、「限月」といって、ポジションの決済を求められる月が決まっていて、その日が来ると、その時点で反対売買を行うか、現物を引き取らなければなりません。反対売買とは、買いから入った取引は売り、売りから入った取引は買い戻すことで、一旦それまで保持してきたポジションを決済することです。反対売買すると、そこで生じている損益は実現されます。あるいは、会から入っていて、限月に損失が実現するのは避けたい場合は、差額を払い込んで現物を引き取ることもできます。しかし、原油やトウモロコシの現物を引き取っても、個人の場合、どこにそれを保管しておくのかという問題があるので、現実的ではありません。したがって、個人が商品先物取引を行う場合、限月が到来したら反対売買を行うより他に方法はありません。ちなみに、金先物取引の限月は偶数月の6限月制なので、今が11月だとすると、12月、2月、4月、6月、8月、10月になります。つまり11月に持ったポジションの清算は、最長でも来年の10月までですから、実質的に1年弱しか売買したポジションを持つことができません。

 これらの理由から、商品先物取引では、長期的なインフレリスクのヘッジを行うのは現実的ではありません。

 

 

コモディティインデックスに連動する債券に投資する

 1990年代、商品ファンドが話題を集めました。これは、コモディティを組み入れた投資信託のようなもので、一部大手商社や商品先物会社、リース会社などが販売を行いました。しかし、当時は最低購入金額が1億円と大口で、個人層にはなかなか普及しませんでした。そんな中、投資信託コモディティに投資できるようになったのが、コモディティ投資信託です。

 といっても、投資信託は有価証券や短期金融資産が投資対象なので、商品先物取引コモディティをそのまま組み入れることはできません。現状、コモディティ投資信託と呼ばれているものは、コモディティ市場全体の値動きを示すコモディティインデックスに対して価格が連動する債券を組み入れるか、商品や商品先物取引で運用している外国債投資信託を組み入れるという、2つの方法で運用されています。

 したがって、前者は「バランス型投資信託」になりますし、後者は「ファンド・オブ・ファンズ」になりますが、いずれにしてもその運用成績は、貴金属や工業原材料、エネルギー、食糧といったコモディティの価格に連動します。

 また、コモディティの価格に連動するといっても、その基準価格は、マーケット全体の値動きを反映するコモディティインデックスに連動するものと、金や原油など特定の商品の値動きに連動するものがあります。

 

コモディティ投資信託には、未上場の投資信託だけでなく、東京証券取引所に上場されているETFの中にも、コモディティのインデックスや商品に連動するタイプが複数上場されています。原油や金、白金、パラジウムといった特定の商品の価格変動に連動するタイプが中心です。

 

 

コモディティへ投資することの意味

 コモディティはインフレに強いという前提があり、その意味では、やはりインフレに強い株式市場と同じ方向に動くケースもあるのですが、それとともに、特に菌などは「最後の資産」と言われるように金融不安や経済恐慌が生じたときに資産の避難先として注目される傾向があります。そうなった時のリスクヘッジとして、金を保有しておく意味があります。

 例えば、リーマンショックのように世界中の株式市場を巻き込んだ大暴落が起きると、手持ちの株式を売りたくても、買い手が全くいなくて売ることができず、しかもその間、株価はずっと下落の一途をたどり、大きな損失を被ってしまうことになりかねません。そういう時、金を保有しておけば、たとえ手持ちの株式は大きく値下がりしてしまったとしても、金価格の上昇によって、ある程度、資産価値が目減りするリスクを軽減できます。つまり、金融不安など株式市場を大きく揺るがすような大きな経済事件が起きた時、金価格は株価下落とは逆の方向に動き、株式が被った損失を穴埋めしてくれるのです。

 したがって、それほど大きな資産を投入する必要はありませんが、多少、コモディティ投資信託ポートフォリオに組み入れることで、こうした金融市場を襲う究極のリスクへの備えができるようになります。

 また、コモディティというのは、基本的には海外市場での取引が中心であり、コモディティ投資信託の投資対象も、日本国内の商品市場よりも、海外市場が中心です。したがって、日本から投資する場合は、為替リスクが発生します。円安が進めば、組み入れ資産に為替差益が生じるため、基準価格の上昇要因になりますが、反面、円高が進めば、為替差損の影響によって基準価格には下落圧力がかかります。